歩くと響くステージの上で、卒業生代表の言葉を述べる名前はなんだか凄く格好良かった。いつも私といる時のへらっとした感じの表情なんて一切出さないその姿は、流石ねとしか言いようがなくて、卒業生の群集の中の私から見るととても遠い存在に思えてならなかった。別に誰もそんなことなんて思ってないのに、私ってバカね。

「名前は泣くと思ったな」
「私はクリスの方が泣くって思った」
「…何で泣かなかったんだろ」
「ね、卒業って感じ、しないのかな」

 式を終えると三々五々に散ってゆく卒業生に紛れて私も名前を探しに行った。そうしたら名前も私を探していたようで鉢合わせになったお互いの顔をみて笑ってしまった。これからクラスのお別れ会ね、なんて言えば、お別れ会っていうけどどうせ打ち上げのようなものでしょ?そんな彼女の返事にまた笑ってしまう。
 二人でいればどんな下らない話だって楽しい話になる。どんな時でも時間を忘れられる。

「卒業って感じ、しないね」
「そーね、また明日普通に登校してそう」
「そういえばリヒテンダールくんとはどうするの?」
「まあ、一応継続…のつもり」

 またそんなことばっかり言ってるとリヒテンダールくんに愛想尽かされちゃうよ、笑ってそう言った名前は卒業証書をことんと下に落とした。汚れちゃうじゃない、なんていおうとしたら目の前の彼女の顔をみて思わず言葉が詰まった。

「名前…?」
「ご、ごめん…なんか可笑しいね、」

 これからクリスと毎日こうして話すこともないんだなとか、ちょっとリヒテンダール君にやきもちを妬いた自分が女々しくてなんか…。
 名前の言葉を聞いてやっぱり彼女も実感がなかっただけなんだ、とか名前が泣いている理由に自分があることに優越感を感じている自分がいやらしいだとかいろいろな気持ちが押し寄せてきた。
 私だって寂しいよ、これからずっと名前と会えるわけじゃないだなんて。

「毎月第四日曜日、そしてその日がダメなら事前に予定をあわせておくこと、一ヶ月に一度ちゃんと現状報告、それから…」
「クリ、ス…?」
「私と名前はこれからだってずっと一緒よ、そりゃ今までどおり毎日なんて物理的に無理かもしれないけど、でも私は名前と会えなくなるなんて思いたくないわ」

 だから毎月第四日曜日、いい?
 自分でも吃驚するくらいの笑顔を名前に向けながら、一息でそう言えば名前は吃驚したような表情を一瞬見せてから得意のへらりとした笑顔をみせた。


そんなところが憧れです
 さっきまであんなに凛々しかったのに、でも名前はそっちの顔のほうがらしいかも。

:)080213
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