放課後の教室には、私と名前とクリスの三人。HRが終わってから何とはなしに話していて、気がつけば辺りが薄暗くなっていた。
 外暗くなってきたね、なんて言えばいつものことじゃない、なんてクリスの言葉に名前が頷いた。この二人に会うことがなかったら、きっと私は放課後にこうして時間を忘れて話すこともできないまま、高校を卒業していたかもしれない。そう思うと、明るくて活発な二人に感謝の念が沸いてくる。でもそれを言うのはどうも恥ずかしくて、いつも伝える事が出来ない。きっと伝えたところで、そんな当たり前のこと言わないでよ、なんていわれそうだけど。

「そういえば、フェルトはニール先輩にチョコあげないの?」
「えっ!」
「そうよーあげないの?」

 にやにやと私を見てくる二人はそのままバレンタインデーの話に持っていった。別に私が二ール先輩のことをどう思ってるかなんて言ったこともないのに。やっぱり二人は凄い。いつもこうして私が言わなくても何もかもわかってる。(だから一緒にいてすごく落ち着くんだ)

「好き、か、わからない…の」
「やばいねクリス、すっごい初々しい」
「本当ね名前、私たちとは大違いだよ」

 でもバレンタインデーは感謝の気持ちを込めて送るってのもあるよ、とにっこり笑った名前の言葉を頭の中で何度もリピートさせる。感謝の、気持ち…。

「いろいろフェルトはお世話になってるんでしょ?」
「うん、だから憧れなのかな…って」
「あーもう本当フェルト可愛い!」

 がばっと抱きついてきた名前を無理矢理クリスが引き剥がしてから、もう一度議題を持ち直すかのようにクリスが一つ咳払いをした。
 感謝の気持ち…かあ、
 こんな気持ちはじめてだからよくわからないけど、あげても、いいのか…な。

「考えてみる、」
「うんうん、それがいい!」
「ところで名前はあげないの?」
「えっええっ!」

 今度はターゲットが名前に変わったみたいでクリスはまたもにやにやしながら名前を問い詰めていた。でも、私も凄く気になるかもしれない。名前がどうするのか。

「昔から幼馴染ってことで毎年恒例行事みたいなもんだから、一応あげるけど…」
「でもその何十年かの間に、義理チョコが本命へと姿をかえたのね」
「べっ別にいいでしょそんなこと!それよりクリスはどうなのよ!」

 リヒティと上手くいってるって噂ですけどーとこれまらニヤニヤした名前がクリスのことをちょいちょいと突付いた。その名前の指をぐいと握り締めたクリスは買いチョコあげるわ、海老で鯛を釣ろうと思ってね、なんて言って笑った。
 だけどそんな言葉が照れ隠しなのを私も名前もわかってるから、素直じゃないんだから、と二人で顔を見合わせた。
 今年は十五日に三人で集まって報告会をするのだろうか、なんて思ったら凄くドラマの青春みたいで驚いてしまった。


その時は二人にも渡そう
 感謝の気持ちをこめて、

:)090214
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