私ね、留学しようと思うの。
 頭の中にぐるぐると木霊するその言葉の主は、にっこりと笑ってそのまま髪の毛をいじり始めた。そうだ、昔からやりたいことがある、と。目指すものがあるんだ、と。そう真っ直ぐに自分の夢を話す先輩に、ミレイナはずっと憧れていた。

「正確には外国の大学に、進学するの」
「…凄い、です」

 そんなことないよ、なんて言って小さく笑った先輩の目は凄くキラキラしていて、綺麗で、頼もしくて、ついつい見とれてしまう。やっぱりミレイナがずっと憧れていた先輩は、今も健在なのだと思い知らされたような気になる。

「おめでとうございますです!」
「ありがとう、ミレイナと会えなくなるのは寂しいけど…」

 でも長期の休みには帰国するから、そのときはまた会いに行くね。
 いつでもミレイナの欲しい言葉をくれる先輩は、きっとミレイナの考えている事なんてお見通しなんだ。
 そんな大好きな先輩の成功を、応援しなくちゃいけないのに、もっと喜ばなくちゃいけないのに、嬉しいはずなのに、なのに、なのに…。

「ミレイ、ナ…?」
「ごっごめんなさいです!こっこれはあの、違う、くて、その…っ!」

 自然に流れ出た涙を止める術を知らなくて、どんどん溢れ出すそれを拭う事しか出来ない。こんなこと、先輩を困らせるだけなのに、なのに、なのに…。
 ごめんなさい、もう何度目かもわからないその言葉を継ごうとしたその瞬間、ふわりと先輩の匂いが鼻を掠めた。それはどことなく優しくて、なんの香水なのか、はたまたつかっているシャンプーの匂いなのか。そんな匂いが、ミレイナは好き。

「せん、ぱい…?」
「ミレイナは、かわいいね」

 泣かれるとは、思わなかったな。
そっと、耳元で囁くようにそう言った先輩に、何故だが顔に熱が集まった。ミレイナは、最後まで先輩に迷惑ばかりかけて…。

「そんなミレイナが、私は好きだよ」


いつか、隣に
 だからとりあえず、ミレイナも自分のやりたいことをみつけるです。
そして、そして、いつか隣に並んでもおかしくないくらいになる時まで…

待っててください。

:)090221
何がしたかったのかわかりません。
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