ちゅ、とわざとリップノイズが残るようにしてティエリアの頬にキスをすれば、彼女は物足りないとでもいうような視線を送ってきた。ここ学校だよ?とまるでなんとも思ってないように耳元で言ってのければ、お前が先に…!と目に涙を浮かべてティエリアは私のスカートの裾をキュッと掴んだ。そんな動作のひとつひとつが愛おしくてそっと頭を撫でれば、キッとした視線で睨まれた。
「いつもそうやって子ども扱いだ」
「そんなことないよ、」
「そうだ、いつもいつもそうやって…!」
別に好きでも何でもないなら構ってくるな、迷惑だ、そう言ってから唇を噛み締めたティエリア。別に子ども扱いしてるわけじゃない、好きじゃないわけがない。だけど、性別って壁がいつも私の邪魔をする。もしも私が男の子だったら、ティエリアを不安になんてさせないのに、いつだって捕まえて離さないのに。
「私はティエリアが好きだよ」
「嘘だ、」
「嘘じゃないよ」
「じゃあ…っ!」
なんでいつも中途半端なことしか言わないんだ…!と搾り出すような声でそう言ったティエリアはそのまま下を向いてしまった。私だって本当は安心させてあげたいけど。でもやっぱりティエリア相手でなんて余裕はないし、もしも彼女の気持ちが私から離れてしまったら…だなんて考えるのも怖い。
彼女よりも私はひとつ年上で、私への気持ちが憧れのようなものである可能性は大いにありうる。そうなった場合、私はどうしたらいいんだろうか。要するに、これ以上私が深くはまりすぎてしまうのが怖いんだ。ただただ、臆病なだけ。
「ごめんね」
重すぎるのは、嫌でしょう
そんなの、逃げてるだけだ。