もう夏も終わってしまう少し涼しい残暑というよりは、初秋と言ったほうがしっくりくる夕方。
 アントーニョの管轄外となっている私の菜園たちに水をやってから、靴を脱ごうとしたその瞬間、アントーニョが飛びつかんばかりの勢いで抱きついてきた。あれ、さっきまでトマトに水をあげていたはずなのに。

「ど、どうしたの?」
「見てみい!この空の色!」

 ほんま綺麗やない?にっこにこした笑顔でそう言ったアントーニョは私を放しても尚、腰に手を回している。ちょっと恥ずかしいとは思うけど、もうこのくらいのスキンシップは慣れたようなものだ。
 それよりもアントーニョに言われて初めて気がついたその空の色が、あまりにも綺麗で見事で、思わず見とれてしまう。

「す、ごい」
「せやろ?ロヴィー!ちょお来てみー!」

 なんだこのやろー、とちょっと長引いたシエスタを邪魔されたロヴィは不機嫌な面持ちで表へ出てきた。寝癖のついた髪を手で整えてあげると、少し恥ずかしそうに私に抱きついてくる。全くこの家の男子は甘えたがりなのだろうか。
 抱きついてきたロヴィを抱きかかえて、ほら、と促すと眠気眼だったロヴィの目も見開かれる。

「凄いやろー親分がみつけたんやで」
「もう、子供みたいなこと言って」

 空を見つめたままぎゅう、と私の服を掴むロヴィに、綺麗だね、と囁けばロヴィは無言でこくんと頷いた。可愛いなあ、と頬にキスをするとそんなところだけ年不相応に紳士なロヴィは私の頬にそれをし返す。これは将来が楽しみでもあり、不安でもあるぞ。

「なあ、ロヴィばっかりずるい」
「…はいはい」

 ここには子供が二人もいるようで、ダダをこね始める隣の大きな子供にもロヴィにしたように頬にキスをすると、それに気をよくしたのか、はたまた何なのかはわからないが、アントーニョは唇にそれをし返してきた。それをみたロヴィは、またアントーニョに攻撃しようとじたばたと暴れだす。そんなのちょっと考えたらわかることなのに、全く学習能力がないのか、それとも業となのか、多分後者であろうアントーニョの爽やか過ぎてうざいくらいの笑みに、慣れているはずなのに少しどきどきしてしまった。ああ、惚れた弱みとはこういうことなんだろうか。

「あ、飛行機雲」

 言った瞬間、暴れるのもおちょくるのも忘れて二人してじいっとその綺麗なラインを眺めていた。


飛行機雲は子供の心をひきつける

:)090804

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