「あ、久しぶりねフランシスにギル」

 今日はアントーニョはお仕事で、ロヴィと二人でトマト畑にいたところに見知った声。
 見上げるとアントーニョの悪友、だけど私の友人でもある二人の姿。あからさまに警戒心むき出しのロヴィをなだめてから、二人を家に招きいれて、普段着へと着替える。

「紅茶でいいかな」
「俺はビールがいいけどな」
「はいはい、全員紅茶、と」

 ギルの面倒くさい注文は聞かなかったことにして、フランシスとギルと私の分の紅茶と、ロヴィの分のミルクを持ってみんなのもとへと戻る。
 一通り出した後、ロヴィを自分のひざの上へと乗せてやっと一段落。
ここにきたということは、何か用でもあるのだろうか。

「ごめんなさい、今日はアントーニョはお仕事でいないの」
「みたいだな、まあ別にたいした用があったわけじゃねえよ」

 紅茶を一口飲んだあと、にっと笑ったギル。用がなかったのなら、どうして…。と私が疑問を広げていると、フランシスはにこやかに口を開いた。

「そろそろお兄さんの所に来る気はないかなーって」
「嘘付けよ」
「まあそれは冗談なような本当、で結局はたまたま近く通ったから久しぶりに二人の顔でも、と思ってさ」

 ロヴィちゃんと一緒に来てくれてもお兄さん全然大丈夫だからね、アーサーんとこみたいに変な趣味もないしご飯も美味しいしさーとによによしながらそう言うフランシスの目は軽く本気で、そんなところも変わってないなあと小さな笑いがこみ上げてきた。

「うるせー髭ヤロー!」

 そんな中私の腕からすり抜けて、フランシスめがけてお得意の頭突きを決め込んだのはロヴィで、あまりの急展開にギルなんてポカーンとしてしまっている。一方フランシスはというと、ぶつかったおなかを押さえてちょ、このこどうしたの…!と痛みに耐えている様子。

「こらロヴィ!そんなことしちゃ…」
「この髭ヤロー、今度手出したらただじゃおかないんだからな!」

 私とフランシスとの間のテーブルで仁王立ちする小さなロヴィが可愛くて可愛くて、フランシスのことなんてそっちのけで抱きしめてしまった。
 ギルはギルでケセセセなんて気持ちの悪い笑い声でもっとやれーなんて言ってるし、フランシスはあ、でもいいかも…なんて言ってるしで、収集のつかなくなってしまった場に、救世主といえるのかいえないのか、とにかく彼が現れた。

「遅なってごめんなーかわりに二人にお土産買おてきたからゆるしたってー…って何、どしたん」
「あ、お帰りアントーニョ」
「遅えぞコノヤロー!肝心なときにいつもいつも…!」

 帰ってきたアントーニョはフランシスとギルを見るなり驚いたような顔をして、そして次にはロヴィの頭突きを受けていた。
 ギルは相変わらず笑っていて、それにフランシスまで加わって、結局救世主は救世主になってはくれなかったけれど、二人の古い友人の変わらない位置関係が、なんだか懐かしくて心地よかった。


懐古趣味ではないけれど

:)090727

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