「またそんなはしたない格好で…」
「だって暑い」
まるで小姑のようにはあ、とため息をついた菊さんは、私の部屋着をあまり快く思っていないようで。
別にキャミソールに短パンのどこがいけないというんだ。下着で走り回っているわけじゃないんだから。
「菊さんがいない時は下着のままですよ」
「ああ聞いてはならないことをきいてしまいました」
目の前の扇風機を自分だけに当たるようにセッティングしなおしてから、ソファーへと寝転ぶ。夏だから、と浴衣のような格好で正座までしている菊さんとは大違いだ。
「夏は嫌いです」
「そうですか、楽しいこともありますよ」
「暑いし、蝉もリア充どももうるさくなります」
「後者の一部は共感しましょう、ですが夏にはコミケがあるじゃないですか」
「冬にだってあります」
どうせ冬になったらなったで寒いから嫌い、と言ってしまうんだろうけど。
ふと菊さんを見れば、菊さんには扇風機の風が全く当たっていないというのに、汗ひとつかいていない。私なんかよりもずっと、肌を隠す布の面積が多いのに。
「夏は海やプールのネタがかけますよ」
「海やプールにいけますよ、と言わないところが菊さんらしいですね」
「元引篭もりをなめないでください、それはそうと、外の暑さを全く感じないクーラーの聞いた部屋でするゲームも乙なものですよ」
「菊さんは一度二次元やオタクな話からはなれてみてはどうでしょうか」
それは困りましたね、私の得意分野が潰されてしまいました。とさして困ったような表情を見せないで菊さんはそういった。
私はというと、起用に足で雑誌を拾い上げ、それに目を通す。ああ、今期はあの三期が放送か。
「そうですね、それでは…」
夏休みな貴女と一日中一緒にいられることが、好きですかね。
「どっ同人誌のネタにするおつもりでしょう!」
「おや、照れ隠しなんてオプションまで用意してくださるのですか、勉強になります」
「なんてくそジジイ…!」
:)090803