「たとえばだよー」
「うん」
クーラーのきいた部屋には私とフェリの二人だけで、私はソファーに寝そべって雑誌を読んでいた。フェリは私に構ってまとわりついたり、擦り寄ってみたり。慣れからなのか、そんなフェリのこそをペットのようだと思ってさえしまう。
きっと今頃菊は次のネタを考えているんだろうなーとか、ルッツはまた暑苦しく外で訓練なんてしてるんじゃないかなーなんて。
そんな中、フェリがいつものように口を開いた。
「俺がとつぜんだよ?」
「うん」
「いなくなっちゃったら、どうする?」
目を合わせずに、私の首筋に顔をうずめたフェリはぎゅうと抱きしめる力を強くしてそう言った。
フェリが突然いなくなってしまったら…?
そんなこと、考えたこともなかった。
何でなんだろう、私もフェリも普通の人間とは違うからだろうか。だけど、そんな私たちだって終わりがくることもあるということを、私は今まで嫌というほど見てきたというのに。
でもそれよりも、なによりも。フェリが急にそんなことを言ってきたことが一番気になってしまう。
「なんでそんなこと、きくの?」
「俺はきっと寂しくて、悲しくて、死んじゃうと思う」
それはフェリが私がいなくなったときのことを考えたら…ということで、雑誌をめくる手を止めて、フェリの頭をそっと抱きしめ返す。
昔ならば急に…ということも珍しくはなかったかもしれない。でも今現在、一国がなくなってしまうというのはあまりにも大事だし、まずそんなことがあったとしても、その前に予兆を見せるだろう。
「私もフェリがいなくなったら、嫌だなあ」
「後を追ってくれる?」
「フェリは追ってほしい?」
「俺がいなくなった後に、他の人を好きになるのは寂しい」
「そうだね、私もきっと同じだ」
いつの間にかフェリは、首元にうずめていた顔を上げて、近い距離で私とフェリの視線がかち合う。
ふっと笑って見せれば、フェリは勢いよくキスをしてくれて、愛されてるなあ、なんて感じてしまう。
「国としてはだめだけど、でもやっぱり私も…」
あなたと一緒に消えてなくなって、
あなたがいなくなった世界も、私がいなくなったあとの世界も、どちらかが一人ぼっちの世界なんて耐えられないよ。
:)090820