HR終了のチャイムが鳴って、次々と聞こえてくる椅子と床がこすれる音に混じって私も椅子から立ち上がる。
カバンの中にはもちろん教科書ノートの類は入っていなくて、お弁当と携帯と財布とポーチとその他諸々。所謂学業には必要のないものばかりだ。
そんなこと構いもせずに、そのさして重量感のないカバンを手に、もう片方の空いた手で前髪を整える。
とにかくあのバカが来る前に教室を去らなくては。
きっと耀あたりは俊足で教室を出ているだろうから、次なるターゲットは私に決まってる。
「捕まえたんだぜ名前ー!」
「いやああああああ!」
兄貴の教室いなかったんだぜ、と予想していたことだったためにあまり反応をせずにいると、つまらないんだぜー!とまた無駄にでかい身体で私に飛び掛ってきた。ああもう、ちゃんと運動部とかに入っておけばよかった…!今日ほど自分の脚力のなさをうらんだことはない。
「今日名前の家いくんだぜ!」
「行ってもいい?とか聞かないでもう決定事項ですかそうですか」
「名前の家は俺が起源なんだぜ!」
もう突っ込む気にもなれない、とひとつため息を漏らせば、当のヨンスは全く悪びれた様子もなくため息吐くと幸せが逃げるんだぜー!ともうすがすがしいくらいのウザさを発揮していた。
もうなんかむかつくから帰ったら耀の家に押しかけてやろう、きっと耀大好きなヨンスのことだから断るわけもないだろうし。
「もうなんでこう毎日ヨンスはうちのクラスまでくるの?」
「…名前のクラスの起源は俺なんだぜ!」
何か地雷でも踏んだのだろうか…いや、ヨンスに限って地雷なんてあってないようなもののはず。でも、私の問いかけにいつもなら即答するはずのヨンスは、なぜだか私と並んで歩いていた場所から一歩といわず二歩も飛び出してからそう言った。
おかしい、と思うことももう面倒くさいのかもしれないけど、一応その旨をヨンスに問いかけてみる。
「なんかヨンス変じゃない?」
「まっまあ名前の起源は俺ってことにしてやってもいいんだぜ!」
あれ、話し噛み合ってないんだけど…そう言おうとして、でもいきなりヨンスが走り出したことに驚いて、声が詰まってしまう。
ちょっ、ちょっと…!追いかけようとしたその瞬間、振り向いたヨンスは近所迷惑もなにも考えずに大声をあげた。
夕日、騒音、近所にて
「名前ー返事聞きたいんだぜー」
「うっうるさい!ちょっと待ってもうちょっとデリカシーってものを…!」
「ちょ、お前ら勝手に人んち来といて…他所でやるよろし」
:)090825