※ちょっと百合なかんじです。



 綺麗な夕日の差し込む教室。いつもと同じように、私と名前はその教室の窓側の一番後ろの席の椅子を二つ寄せて、二人で話し込んでいた。

「でね、ギルったら本当に馬鹿なの!」
「もうキングオブ馬鹿って顔に書いてあげたいわね」

 そう言うと名前はそれはやってみたい!今度そういう張り紙背中に張っちゃおっかな、と笑った。
 あの馬鹿ならきっと気づかないでしょうね、だって正真正銘の馬鹿なんだもの、それはいっいくらなんでもっいっ言いすぎだよ…!そういう名前だって大笑いしてるじゃない、こっこれは…!だって…!
 笑いを堪えられなくなった名前は目じりに涙が溜まるほど笑い転げている。私は正直、あの馬鹿がどうなろうと知ったことじゃないけれど、こうして名前が笑ってくれるなら、あの馬鹿の話もしてあげていいかもしれない、なんて。

「そっそういえば選択の体育なんて書いた?」
「テニスって書いたわ、名前は?」
「やった!私も同じ!」

 嬉しいなーやっぱり私たちって趣味が合うんだね!と純真無垢な笑顔を見せた名前に、心の中でそっと、それは私が名前ならテニスを選ぶだろうなって思ったからよ、と付け足した。
 正直どんなスポーツをやるかなんて私には関係なくて、体育の時間が楽しくなるかならないかは彼女がいるかいないかにかかっている。
 それは体育の時間だけじゃなく、そのほかにだって言えること。

「じゃあ私ダブルスでエリザと組みたい!」
「私もそう思ってたとこよ」
「組み合わせ好きな人同士だといいねー!でもエリザ運動神経いいからなあ…足引っ張らないように頑張るから!」

 別にまだダブルスなのかも、そして組み合わせが穏当に好きな人同士なのかもわからないのに。それなのに、いっぱい練習しなくちゃ、とたかが体育のテニスにそれだけの思いを込める名前に、自然と頬の筋肉も緩む。
 普段、みんなの前で笑顔でいようと心がけているけれど、彼女の前だけは特別。その前にどんな嫌なことがあったって、名前に会うだけで、話すだけで自然と笑顔になれる。
絶対に彼女には言えないけれど、私はこの感情の意味を知っている。

「あ、あのね、急にごめんねエリザ、聞いてほしいことがあるんだけど…」
「なあに?」
「エリザには一番に言おうと思って…あ、あのね、私…」

「好きな人ができたかもしれないの」


全て消えてなくなればいいと思ったの
 初めてなの、彼女の前で笑顔を作らなくちゃいけないのなんて。

:)090923
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