「姉ちゃーん!俺の靴下知らなーい?」
「おいなんで起こさねえんだよコノヤロー!」

 朝からばったばたと騒がしいのは今に始まったことではなくて、私は私で慌てて朝食と自分の用意をしている最中だ。確かに私が少し寝坊したのがいけなかったのだと思う、だけどそんな状態でも朝食の準備をちゃんとやろうとしているこの今の現状を、二人の弟にはわかっていただきたい。

「フェリの靴下は昨日ちゃんとしまっておきました、ロヴィは自分で起きれないのがいけないんでしょ!」

 わかったら二人とも早く顔洗って歯磨いてくる!目玉焼きの様子を見ながら背後のトースターに入れたパンのことを気にしつつ、二人の準備がさっさと終わるように促す。
 姉というのは意外に大変なもので、その上手のかかる二人の弟がいるというのは尚更だ。

「あっ兄ちゃんずるいよ俺が先にきたのにー!」
「うるせえ俺の方が年上なんだから譲るもんだろ」

 遠くで聞こえる毎日恒例の口喧嘩を聞いて、きっと洗面所の使う順番でもめてるんだろうなーなんてぼんやりと考えた。そういえば今日の講義は何時からだったかな、もう少し余裕のある組み方をしておけばよかった…と後悔しつつ、来年からは絶対にそうしよう、と決意したところでチン、とトースターの焼けた音がした。
 二人ともベーコンはカリカリ派だから焦げない直前くらいまでフライパンで焼く。そろそろどっちかがダイニングまで来るころかなーと考えていたら、その直後に今日の朝飯なにー、と憎たらしいほどに偉そうなお兄さんの方。

「ほら、支度終わったなら食器並べるの手伝って」
「うるせえ、フェリシアーノにでもやらせればいいだろ」
「もう、お兄ちゃんなんだからそのくらいしなくちゃだめでしょ!」

 渋々お皿を並べるロヴィに続いて、フェリがあー今日はカリカリベーコンだーなんて能天気に現れた。フェリは何も言わなくても手伝いをやってくれるから、その点ロヴィよりは良い子だ。

「コーヒーとミルクどっちがいい?」
「俺エスプレッソ」
「俺ミルクー!」
「はいはい、コーヒーとミルクね」

 エスプレッソなんてないから、と言うのも面倒で、適当に解釈をしてからカップにお湯を注ぐ。
 よく混ぜたコーヒーとミルクを二人の前におくと、ありがとー、なんて満面の笑みで言ったフェリに、当たり前のように何も言わないロヴィ。もうどこで育て方を間違えてしまったのだか私にもわからないが、兄弟でどうしてこうも違ってしまったのだろう。
 このやろ、とロヴィの頬を抓るとなっなにふんだ!と少し間抜けな顔で可愛いだなんて思ってしまう。

「はい、じゃあ三人そろったからいただきますしようか」

 いただきます、とここだけは三人そろって言うのが我が家の決まり。その後は時間が迫っているからか、あまりゆっくりする暇もなくみんなで朝食を平らげる。

「今日の片付けと買い物当番はロヴィだから忘れないでね」
「わあってるよ子ども扱いすんな」
「兄ちゃんはすぐそうやって怒るんだからー」

 当番製の我が家の家事は、曜日によって変わる。
 だから大体自分の番を忘れることなんてないのだけど、やっぱりロヴィのことは心配になってしまう。逆にフェリの方が安心できるというのは、なんでなのだろうか。

「ねえ、姉ちゃん」
「なに?」
「今日は何時に帰ってくんだよ」

 今日?今日は七時ごろだと思うけどー…なんで?
 ロヴィが聞いてくるなんて珍しい、とトーストをかじりながら尋ねると、ロヴィに絶対遅れんなよ、と念押しされた。だからなんで?

「今日はいつもお世話になってる姉ちゃんに恩返ししたくて」
「ばっか!言うなって言っただろ!」
「あ、兄ちゃんごめーん」

 恩返し?
 その聞きなれない単語に一瞬頭がついていかなくなってしまったけれど、理解してからはもう、二人が可愛くて仕方がなくなってしまった。
 だからお前は…とフェリに説教するロヴィも、ロヴィに説教されてしゅんとなってるフェリも、二人まとめて頭を撫でる。

どうやら育て方は間違ってなかったようです。
 二人はお姉ちゃんの自慢の弟です。

:)091011
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