無愛想なご挨拶



「三成!正則も、せっかく久しぶりに会えたんだから、ちゃんと仲良くなさい!」

「だっておねね様、三成が…」

「正則、三成にはちゃんと考えがあるんだよ。あたしは三成を信じる。だから、あんた達も一緒に来てくれるかい?」


ねねは優しげな笑みを浮かべ、未だ納得がいかないといった様子の正則を諭そうとするが、三成は小馬鹿にしたように鼻で笑い、更に正則の神経を逆なでさせる。
正則は三成に掴みかかる勢いで、鼻息も荒く絶叫した。


「ぜ、ぜってぇ頭デッカチなんかには従わねえからな!!」

「はて、馬鹿が何やら喚いているようだが」

「もう!二人ともいい加減になさい!」


こうも緊張感が無いと、寸劇を見ているかのようである。
仮にも戦場で、今の今まで殺し合いをしていたと言うのに、彼らはすっかり日常を取り戻している。
悠生はおろおろとしながら、ねねに説教をされる三成と正則を見守っていたが、ふと後ろから声をかけられ、びくりとした。


「悪いな、騒がしくて。顔を合わせる度にこうなんだ」


申し訳なさそうな顔で謝罪をしたのは、清正である。
謝られてしまったことに驚き、首を横に振ったら、清正は困ったように笑った。


「お前、三成の小姓か?」

「小姓ではないんですけど…似たようなものです」

「そうか。三成がお前の手を握っていたから、何事かと思ったんだが」


確かに、その場面だけ見れば不思議な光景であろう。
清正は三成と正則が口喧嘩を始めた時点でやる気を無くしてしまったらしい。
ねねに正座をさせられ小言を浴びせられる哀れな二人を遠目で見ながら、清正は深く溜め息を漏らしていた。
悠生は何か言わなければならないような気がして、あれこれと悩んだ末、途切れ途切れに言葉を紡いだ。


「み、三成さまは…とても、楽しそうでした。おねねさまや、お二人に会えて…」

「楽しんでる、の間違いじゃないか?正則をいじって遊んでいるんだよ、三成は」


事実、その通りであろう。
もし三成と清正が本気で口喧嘩をしていたら、悠生が同じ空気を吸うのを躊躇うほどに殺伐としているはずだ。
相手が猪武者な正則だから、三成は適当にあしらい、からかって楽しんでいたのである。


 

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