いつの日か約束を



苦笑する馬岱を横目で見ながら、馬超は咲良のことを思い返していた。
顔立ちは勿論、身に纏う雰囲気、何より、はにかむような微笑みなどは悠生によく似ていると思った。
しかし、どこをどう見ても普通の娘である。
戦う力があるかも分からない娘が従軍しているのは、やはり悠生と仲の良かった関平の望みなのではないかと、馬超は推察した。


「なあ、馬岱。関平殿は、悠生殿のために、彼女を傍に置いているのだろうか。彼女が、悠生殿の大事な存在だからと」

「ちょい、若。決め付けるのは良くないって。いや、ね、関平殿はそう考えているのかもしれないけど、女心は俺達が思う以上に複雑なものだよ」

「む?俺も関平殿に倣い、悠生殿のために彼女を守ろうと思っていたのだが…」

「つまり、若も関平殿も、彼女が悠生殿と同族だから守ってあげる、ってことなんでしょ?それって本当に、あの娘の望みかな?本来なら、若達が守りたいのは悠生殿な訳だし、彼女も気付いて、気にしちゃってるかも」


女心について力説する、馬岱の言葉の意味をいまいち理解出来ず、馬超は深く頭を悩ませた。
例えば…以前、馬岱は馬岱は馬超の妻であった楊氏の護衛をしていたことがある。
それは楊氏が、馬超の正夫人だからで…、馬岱が彼女を敬っていたことは知っているが、特別な感情から守っていた訳ではない。
そのことに、妻が不満を抱いていたとは思えない。
彼女は身分ある高貴な女性で、守られるのが当たり前だったからだ。


「悠生殿の代わり…として見ているからか。しかし、俺はあの娘について何も知らんのだぞ。好意を抱くどころか、よくこれまで普通に生活出来たものだと関心するほどだ」

「はは…若らしい考えって言うか。でも、考え方なんて人それぞれだよ。俺は、若があの娘を守るって言うなら従う…、それもまた同じだ、俺が守りたいのは若だから。結局、彼女にとっては複雑な話なんだろうね」


 

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