いつの日か約束を



夜もすっかり更けた頃、善光寺をこっそりと抜け出した咲良という娘の後を追いかけた馬超は、もう勝手な行動をせぬようにと何度も言い聞かせ、彼女を皆の元へ連れ戻した。
川中島で救い出した民…、何人かの子供達が眠るその傍らに、咲良が腰を落ち着けたのを見て、馬超も漸く休むことにした。


「若、お疲れ様。凄く疲れているみたいだけど、大丈夫?」


夜空を眺めながら溜め息を漏らしていた馬超に、親しげに声をかけてきたのは従弟の馬岱である。
成都城が遠呂智軍に奪われてからも、馬岱は馬超にずっと付き従い、常に傍らで戦っていた。
日頃から、あらゆる面で馬岱に支えられている馬超は、彼をとても頼りにしている。
ゆえに、彼に隠し事をすることは出来ないのである。


「馬岱か…いや、やはり俺は女子が苦手だと思ってな」

「それって、関平殿と一緒に居たあの娘のこと?でも、放っておけなかったんでしょ?優しいよねえ若は。…まあ、あんなところで丸裸になる女の子も珍しいけどね」


さらりと、馬岱はのぞき見をしていた事実を暴露する。
馬超は一瞬言葉を失うが、全裸の女相手に動揺していた自分の姿を見られていたことを思うと、何やら情けなくなり、更に深い溜め息が漏れた。


「…あの娘は恐らく、悠生殿の親族であろう。姉か、従姉妹か…とにかく近しい存在のはずだ。それゆえ関平殿も、彼女を守っているのだ」

「悠生殿の?親族って…顔がよく似ていたってこと?」


近くで彼女の顔を見た訳ではないから、親族と言われても今一判断しにくいと首を捻る馬岱に、馬超は深く頷いて答える。


「ああ。お前は俺が若い女を前に狼狽したと思っていようが、もしも俺があの娘に指一本でも触れていたら、悠生殿に合わせる顔が無い」

「若ってさ、本当に堅物だよね。いや、褒めてるんだよ」


 

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