変わらぬ心を追い続け



「…大事な女なんだ。凌統だって、あいつに武器を向けられるはずがなかったんだ」

「だったらあなたも撤退せざるを得なくなる。だから、絶対に向かわせはしない」

「俺はあいつを連れて戻る。そして城も守ってやる」

「危険な目に遭わせるだけだと分からないの?本当にその人のことを思うなら、私達が彼らに打ち勝って、遠呂智軍から離反させるべきでしょう?彼女だけを連れ出したところで、私達が負けたら意味が無い」


何を言っても、星彩は頑なに甘寧の行動を抑制する。
束縛と感じるぐらい、攻撃的な目をしていた。
勿論咲良には、刃物のように鋭い眼差しを向けられたことは一度も無い。
同じ女とは思えないほど、星彩の雰囲気は刺々しい。

だが、彼女は死を覚悟の上で武器を持ち、自ら重い使命を背負い、たった独りでその重圧に堪えて居るのだ。
独りであれば皆、このような目をするようになるのだろうか。
どうして、星彩を支える者は現れないのだろう。
彼女とて本来は、守られるべき女であろうに。

暫く押し問答が続くと思われたが、突如として周囲に爆音が響き渡り、甘寧も星彩も驚きを隠しきれずにいた。
見れば、本丸内の壁が見事に破壊されている。
隣接する山田山砦が敵に奪われ、壁を爆弾で壊されてしまったのだ!


「くそったれ!本丸突かれるのを指くわえて見てられるか!」

「戻って!勝手な行動は許さないと言ったはず」

「うるせえ!俺は俺のやり方でやるぜ。あんたは黙って見てな!」


星彩を押し退けた甘寧は、壊された壁の隙間から次々本丸になだれ込む敵兵の群れに突っ込んでいく。
咲良を連れ戻し、城を守る…、そしてあわよくば咲良を自分のものにする、などと欲深い甘寧は、星彩と協力して敵を押し返そうともせず、思うままに戦った。
やはり考えが甘かったのか、願いは叶わず、甘寧は撤退を余儀なくされる。

その後、星彩がどうなったのか、知る術は無かった。
あらゆるところが気に入らない女だったが、一途で不器用な星彩を守ることが出来る男が早く現れるようにと、新たな地に落ち延びた甘寧は心の片隅で願っていた。



END

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