変わらぬ心を追い続け



城下町の敵を一掃し、門をぶち破って突入した孫策の足止めをしていた甘寧だが、今日の孫策は本気で甘寧を打ち負かそうとはせず、急に踵を返し退いてしまった。
これは罠か、もしくは策かと考えるが、頭の良い陸遜が居なければ確かな答えなど掴めない。
しかし暫くして伝令から凌統が敗走したことを知らされ、敵の勢いが予想以上であることを悟った甘寧は、本丸に残る星彩の元へ戻った。
不本意だが彼女と連携し、この難局をどうにか乗り切ろうと思ったのだ。
敵が策を実行するため、本丸に程近い一つの砦に集結していることにも気付かずに。


「凌統が敗走したんだって?なあ、これでも軽はずみな行動は控えろと言うか?なりふり構っていられないだろうが」

「黙って。…彼は逃げた訳じゃない。物見の話によると、彼は笛を武器にする少女と対峙し、彼女との争いを避けるため撤退したそうだから。彼がそう判断した理由は分からないけれど、きっと此処へ戻ってくるはず」

「笛を武器にする女…?おい、まさか…!」


星彩の説明から想像出来たのは、ただ一人の少女である。
凌統が笛を持つ彼女を傷付けまいと撤退したこと、敵が孫策率いる呉軍であることを考えれば、その人物は咲良以外に有り得ないのだ。
妲己の手元にあると思っていた咲良が思いの外、近くに居ることを知り、甘寧は居ても立ってもいられなくなる。


「ちょっと待って。何処へ行くつもり?」

「何処ってあいつのところに決まってるだろうが。何としても取り戻してやる…。あんな真っ白な女は遠呂智軍なんかに関わっちゃいけねえんだよ」

「何を言っているの?役目を放り出さないで」


甘寧の複雑な想いも事情も知らず、厳しい言葉で引き留めようとする星彩を初めて煩わしく感じた。
しかし、甘寧の手首を掴むその細い手を振りほどいたら、彼女はこの劣勢状態の中、本当に一人きりになってしまう。
流石にそれは可哀相だと思い、星彩に乱暴をすることは躊躇われた。


 

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