心に秘めた熱情



「関平は慕う女子に無様な姿は見せまいと私に打ち勝った。私は、例え鍛練であっても、慕う女子を力で負かすことなどしたくなかったのだ」

「じゃあ阿斗は、相手が星彩どのだったから手加減をしたの?」

「それもあるが、仮に私が星彩に打ち勝っほど強かったなら、星彩は私の鍛練の相手をしようとも思わないだろう?もっと強い者に任せようとするはずだ。ゆえに私は星彩に負けるぐらいが調度良いのだ」


阿斗は星彩に恋をしている。
そのことは悠生も分かっていたつもりだが、阿斗はどうすれば星彩に見てもらえるかを考え、実際に世話を焼かせることに成功しているのだ。
頭が良いと言うか、好きな人のためなら自分を頼りない男と思わせることが出来る阿斗に、悠生はいろいろな意味で感心した。


「阿斗はやっぱり凄いね。僕は女の子を好きになったことがないから…自分を見てもらおうって努力するの、大変だろうなとしか思えないな」

「そなたもいつか分かるだろう。しかし、女子に限るという訳では無いぞ。誰かの目を引きたいと思う心は。私は星彩以外に、自分を見てほしいと思う者が居る」


それは意外な話で、悠生が何の気無しに「誰のこと?」と聞くと、阿斗ははぐらかすように視線を逸らすが、「諸葛亮だ」と笑って呟いた。
予想外の人物が出てきて悠生は驚くが、阿斗が聞かなかったことにしてほしい言うものだから、渋々頷いてみせた。


(諸葛亮どのと阿斗の関係って…よく知らないけど、二人はどちらかと言えば仲が良いはずだよね?そういう逸話もいくつかあったし…)


劉備亡き後、諸葛亮は跡継ぎの劉禅をよく支えたし、劉禅は諸葛亮を侮辱した者に怒り、処断したという説もある。
それなのにどうして、諸葛亮の目を引きたいだなんて言うのだろう。
諸葛亮は劉備の息子である阿斗のことも、大事に思っているはずだろうに。
今の二人の間には、悠生には見えない、埋められない距離があるのだろうか。
悠生はあれこれと考えを巡らせたものの、納得のいく答えは出せなかった。


 

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