けだるげな風が吹く



「俺はここにいるよ?君の目の前にね」

「そ、そうですね…変なことを言ってごめんなさい」

「気にすることは無いよ。でも、急にどうしたの?俺の名に覚えでもあったとか?」


彼の反応はまるで小動物のようで、思わず、馬にするように撫でてみたくなる。
しかし、いきなり触れて変人扱いされても困る。
恥ずかしそうにする悠生に質問を投げかければ、彼は少し悩んでいたようだが、恐る恐る疑問をぶつけてきた。


「馬岱どのは、魏延どののことをどう思っていますか?」

「魏延殿?何で?」

「魏延どの…馬岱どのが厩舎に来てすぐに帰ってしまったから…二人は仲が悪いのかなって。そう思ったんです」


どこか不安げに見上げてくる悠生の、意外な問い掛けに馬岱は僅かに驚いた。
恐らくだが、悠生と魏延は友人同士なのだろう。
あの魏延が心を許している人物などそうは居ない。
だからこそ悠生は、魏延が馬岱を見て慌てて飛び出して行った理由を気にして、知りたいと願っている。


「俺は魏延殿のこと、好きなんだけどな」

「えっ、本当ですか!?」

「本当だよ。だけど魏延殿は俺みたいな人間って苦手なんじゃない?ほら、魏延殿って無口だけど俺は違うから」


馬岱が適当に繕った言葉に納得出来たのかは定かではないが、悠生は少しだけ、ほっとしたようだった。


「僕は魏延どのが好きです。でも、馬岱どののことも好きでいたいです」

「俺のことも?」

「はい。だから…馬岱どのもずっと、魏延どのと仲良しでいてくださいね?」


はにかむように笑う悠生は、馬岱のこともすっかり信用しきっているようだ。
しかし、そうやって悠生に見つめられると、違うとも嫌だとも言えない。


(いや、魏延殿が嫌な訳じゃないんだけど……でも、若が悠生殿を気に入った理由は何と無く分かったかな)


ちょっとしたことで、凄く嬉しそうにしてくれるから。
必要とされることで、自分が此処に存在することに、確かな意味があると実感出来るから。

悠生は魏延が置いていった竹箒を拾い、馬岱に手渡した。
最後まで一緒に掃除しましょう、と口にする悠生に、馬岱も自然と嬉しくなってしまう。
馬超もきっと、彼との時間を楽しんでいるのだから、厩舎の掃除を控えてくれ、と説得するのは諦めることにした。



END

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