花の言葉



「指切りしよう?僕の住んでいたところでは、こうやって約束を交わすんだよ」

「指切り?」

「指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ます、ってね」


小指を絡めて、悠生は笑う。
約束を破ったらげんこつ一万回、針も千本飲ませるぞ、と恐ろしい口約。
所詮は子供の口約束。
だが今は、それで十分だ。


「あのね…、大好きだよ」

「な……!」

「僕のことを好きになってくれた阿斗が好きだ。だから、阿斗が僕を嫌いになったら…分からないけど、僕は阿斗のために生きるよ」


道を見失った僕に、生きる理由をくれた阿斗が、全てなのだから。
そう告げれば、阿斗は顔を真っ赤にし、照れているのが見て取れた。


「ふん!悠生が私を好いていることは、初めから知っておったわ!私は……!私は…とても嬉しいぞ…」

「最初から素直になれば良いのに…」


死ぬまで一緒に居る、とは言えなかった。
阿斗も、聞かなかった。
未来も大切だが、今、二人が一緒に居れれば、それで良かったのだ。


「悠生よ、私が次代の皇帝となった暁には、この桃園をそなたに授けよう」

「桃園を?駄目だって!僕には勿体無いよ。星彩どのは?」

「星彩には、いずれ…玉を贈ると決めている」


阿斗は劉備の嫡子だから、妻を持たなくてはならない。
幼いながらも、彼は愛する星彩を后にするつもりでいる。
だから、桃園を贈る…、それが阿斗なりの、悠生が一番だという証なのかもしれない。


(僕は、阿斗と生きるよ。咲良ちゃん…ごめんね。悲しまないでね)


バグは修正の手が加わらない限り、いつまでも消えることは無いのだ。
だったら、許される限り…此処に居たい。
目指す未来は、蜀の皆が幸せになれる物語。
この世界で、新たな道を探し出すことが、悠生の使命だ。


「阿斗は知ってる?桃の花言葉。天下無敵って言うんだよ?」

「ふむ。縁起が良いではないか。私と悠生が共にあれば、我らの行く末は約束されたようなものだな!」


天下無敵、そして、あなたのとりこ。
誰よりも大好きな友達、阿斗とのこれからを想像し、描いてみる。
自分には歴史を変える大きな力は無いけれど、少しでも良い方向に向かうように。
世話になった多くの人達に、沢山のありがとうを返していけるように。



END

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