永久の軌跡



(ああ、すごく…あったかい…な…)


このまま夢の世界にいざなわれてしまいそうなほど、心地良い。
誰も居ない世界の真ん中で、二人きりになったみたいだ。
離れていた時間を取り戻そうとするかのように、強く強く抱き締められた。
触れたところから感じた趙雲の鼓動が、どくどくと…とても速いことを知る。
趙雲は立派な大人で、こんなに余裕ぶっていても、本当は上手く隠しているだけで、悠生以上に緊張しているのかもしれない。


「悠生殿…一つ、私の願いを聞いてもらえないだろうか。簡単なことだ」


珍しく、趙雲は恥ずかしそうに口にした。
英雄としてずっと憧れていた趙雲を、可愛いと感じる日が来るなんて。
このままでは、好きという気持ちが、溢れてしまいそうだ。
出来ることなら何でもしてあげたいと思う悠生は、最愛の男を見上げて、小さく微笑む。
悠生の笑顔に安心したのか、趙雲は悠生の額に唇を落として、一際甘い声で囁いた。


「子龍と呼んでくれ…私の字を、貴方の口から聞きたい…」

「…子龍…どの…?」

「ああ…何と甘美な響きだろう…貴方にそう呼ばれるのは、今日で三度目…いや、二度目だな」


一度目の覚えが無かったため、悠生は首を傾げるが、趙雲は可笑しそうに笑いながら、此方の話だ、と自分の中だけで解決させてしまう。
気になったけれど、趙雲がとても幸せそうな顔をしてくれるから、悠生も応えるように笑った。
今はただ、笑顔が欲しいのだ。
今だけは、使命も役目も忘れて、大好きな人を一番近くで感じていたい。


「おかえりなさい、子龍どの」


──やがて来たる未来を、信じなさい。

過酷な道を選んだことに、悔いは無い。
苦難に出くわし、立ち止まることもあるだろう。
だが、振り向かずに歩んでいくつもりだ。
掛け替えのない親友と、愛する人が居る…それだけで、生きることが出来る。


「ただいま、悠生殿…愛しているよ…」


愛の言葉を欲しいままに…、ゆっくりと、二人の影が重なった。
悠生の恋路も、始まったばかりである。

美しい花が咲く季節を何度繰り返しても、いつまでも変わることがない、鮮やかな桃色。
互いを想い合う心も、変わらないはずだ。
永遠を誓い、新たな約束を交わそう。
乱世を共に、生き抜くのだ。
決して終わることが無い、未来へと繋がる明日を信じて。




END

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