永久の軌跡



そして、これは悠生の個人的な出来事ではあるが、成都に帰ってすぐ、無事に再会した黄皓に、破竹の勢いで説教をされた。
貴方は自分勝手だ、どれほど心配したことかと次々に小言を浴びせられ、嬉しかったが散々な目にあった。
そうした黄皓の努力は阿斗に認められ、今では庭園に足を運んだ悠生と阿斗の世話役まで勤めている。
邪魔をしたくないからと彼は離れた場所に控えて居るが、念願が叶ってさぞかし喜んでいることだろう。


「わっ」

「悠生!」


転がっていた石に躓き、悠生は盛大に転倒する。
阿斗がとっさに手を掴んでくれたが、勢いが良く、一緒に倒れ込んでしまった。
幸い、地面は柔らかな土に覆われていたため、怪我を負うことは無かった。


「いてて…ごめん、阿斗…」

「いや…私の作った草履が履き慣れぬためだろう。次はもっと上手く作ってやるぞ」

「へへっ、ありがと。でも今はこれが良いな。阿斗の草履、僕のお気に入りなんだから」


申し訳なさそうに阿斗は言うが、悠生が履いている草履は、最近阿斗に贈られたものなのだ。
しかも、阿斗のお手製である。
サイズも丁度良いし、履き心地も良い。
何より、阿斗の想いのこもったプレゼントであることが、悠生をたいそう喜ばせた。
阿斗が眉を寄せる必要など、これっぽっちも無いのだ。

地に倒れたまま起き上がることもせず、笑顔で応える悠生に、阿斗も笑う。
すると、何を思ったか…阿斗は悠生に覆い被さると、そのまま鼻先に唇を押し付けたのだ。
ちゅっと軽い音を立てて離れた唇に、悠生はきょとんとして目を丸くする。
何とも、可愛らしい口付けではあるが…、にっと勝ち誇ったように笑う阿斗を見て、悠生は何も言い返せなくなった。


「さて、私は黄皓と城に戻るとしよう。悠生は暫し此処に残ると良い」

「え、待ってよ、僕も一緒に…」


さっさと立ち上がって背を向けてしまう阿斗を、悠生は慌てて追いかけようとする。
だが、地を踏みしめる第三者の足音…その人物の姿を見て、漸く阿斗の気紛れの訳を知った。

 

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