永久の軌跡



「阿斗、これってもしかして…!」

「ああ、間違い無い。なんと強い生命力であろう。我らの国が成る頃には、必ず美しき姿を見せてくれるはずだ」

「そっか…うん、嬉しい!」


互いに顔を見合わせて、笑った。
些細なことでも、こんなに幸せを感じる。
悠生は、やっぱり阿斗のことが大好きなのだと実感する。
こうして、また隣を歩くことが出来るのも、趙雲が引き留めてくれたお陰である。


遠呂智が古志城に葬られて、既にひと月余りが過ぎていた。
悠生は解放された阿斗と成都に戻ったが、忙しなく働く大人たちとは違い、以前と変わらない穏やかな日々を過ごせている。
関平や姜維などの若い男達は、己の力を試すためにと、蜀を離れ広い世界へ旅立っていった。
少々寂しくもあるが、最近、めでたいことが二つあった。

まず阿斗が、いち早く元服の儀を終え、劉禅と名を改めたのだ。
字は公嗣と定められ、無事に大人の仲間入りを果たしたのである。
悠生も以前、妲己の暗躍により罪人に仕立て上げられたこともあったが、遠呂智との戦いの中で無実は証明されたはずだ。
正式に黄忠と養子となることが許され、公の場での名は趙雲に名付けられた"黄悠"と改められ、字として悠生の名が残されることとなったのだった。

しかし、悠生は今でも、幼名の阿斗と呼び続けているが、呼び名はそう簡単に変えられるものではない。
阿斗も無理はしなくて良いと言ってくれたので、その言葉に甘えることにした。

劉備の志を受け継ぐものの元服は盛大に祝われ、孫呉からも次々に祝いの品が届けられた。
一度は緊張状態にあった呉蜀だが、此度の戦いで共に助け合った両国の間に、再び同盟が成されることとなったのだ。
劉備と孫尚香の二度目の婚姻によって。
尚香は悠生に語った通り、自ら劉備に歩み寄り、プロポーズをしたようだ。
彼女の行動力と勇気は、賞賛に値する。
劉備も尚香の申し出を快く受け入れ、孫権の許しを得て成都に連れ帰っている。
二人の婚約を最も喜んだのは、やはり尚香を慕っていた阿斗であろう。
阿斗自身も星彩を妻にと望んでいるが、彼女の心を物にするにはまだ時間がかかりそうだと、笑っていた。


 

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