永久の軌跡
「次こそは守ると誓った…だが、また私が守られてしまった…幻滅されても、仕方がないな」
「そんなことは…」
「だが、貴方がこうして私から離れようとした理由にはならない。悠生殿…気絶する私に、口付けをしただろう…?」
そう指摘され、悠生は言葉を失った。
寝込みを襲ったのと何ら変わらない、最後の口付け。
あの時、趙雲に意識があったとは思わず…、悠生は羞恥に見る見るうちに頬を赤く染める。
言葉にもせず肯定の意を伝えてしまった。
すると趙雲は初めて微笑み、硬直する悠生の元に一歩一歩近付いてくる。
「私は、貴方に愛されている。私も、貴方を愛している。それでいて、貴方が私の傍を離れる理由など、無いはずだ」
「だって…僕にはまだ…」
「貴方が背負うものがどれほど大きくとも、歩む道がどれほど過酷であろうとも、私は悠生殿を傍に置きたい。独りで無茶をせず、共に苦難を乗り越えれば良いだろう!それとも、私では頼りがないか…?」
あの趙雲に、ここまで言わせているのだ。
彼の想いが偽りなきものだと改めて実感し、悠生はこれ以上無いほどにどきどきしていた。
喉の奥が痛み、言葉が浮かんでも声には出来なくて、なんとか首を横に振って見せる。
趙雲が頼りないからだとか、誰が悪いという訳ではないのだ、これはただの我が儘だから。
「どうしても行くと言うのならば…今此処で、貴方の命を縮めさせてもらうが?」
脅迫とも受け取れる、恐ろしいことを真顔で告げる趙雲に、悠生はぎょっとして後ずさる。
だが、既にがっしりと肩が掴まれていた。
逃げようにも逃げられない上に、趙雲がどんどん迫ってくるから、俯くことも出来ない。
彼の言葉が冗談とも思えず、発言を本気にした悠生は、身を堅くして目を閉じるが、そっと頬に触れた趙雲の手が首を絞めることはなかった。
…代わりに、唇を塞がれる。
あたたかさが、趙雲の想いが…触れ合った唇を伝わって流れてくるかのようだ。
反射的に目を開けた時にはもう、趙雲との距離はゼロになっていた。
どくん、といっそう血の巡りが速くなる。
「…ん、っ…!」
悠生はぎゅっと身を堅くした。
予告もなく唇をこじ開けられ、互いの舌の先が接触する。
すると趙雲は器用に舌を絡め、されるがままになる悠生の口を深く割った。
今までの触れるだけのキスとは異なる激しさに、呼吸も上手く出来ない。
息が苦しくて、とろけそうなほど熱くて…、頭がおかしくなってしまいそうだった。
耐えきれない羞恥と小さな恐怖から、悠生は閉ざした瞳に涙を滲ませながら、目の前の男にすがりつく。
どんなに苦しみを訴えても離してくれず、悠生はもう、自分の力で立っていられなかった。
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