栄光の宮殿



「最後に、一つ聞いておきたいのだが…趙雲とはどうなった。上手くいったのか?」

「え?あ…はい……」

「ほう、それで?早速愛してもらったのか?」

「なっ!?なにを、言って……!」


ああ見えて激しそうな男だからな、とさらりと口にする三成に、意味を理解した悠生は今まさに燃え盛る火のように顔が熱くなった。
誰よりも、悠生と趙雲の仲を心配していた三成だからこそ、尋ねたのだろうが…戦場で話すことでは無いだろうに。
有り得ない、と首を横に振って否定する悠生を、三成は面白そうに眺めている。

想いを通わせた恋人の、キスの先に何が待っているかなんて、経験の無い悠生にだって分かる。
それが同性同士であっても、同じことだ。


(む、無理だよ…だって僕…したことないし…それに、肩だって…)


消えない入れ墨の痕を、大好きな人に知られたくない。
そんなことで趙雲が心を変えるとは思えないが、信じることが怖かった。
だが、もしもの話だが、自分が趙雲と情を交わすことになったら…、その先を、悠生には想像も出来なかったが、嘘をつくことも苦手な自分が、入れ墨を隠しきることは不可能だろう。


「全く、しつこそうな男に愛されたものだな。ああいう男は本気にさせたら恐ろしいものだぞ。きっと、泣いて暴れても逃がしはしない」

「そ、そんな…ことは…」

「だが…、それも貴様を想うがゆえだ。いざという時には、勇気を出して応えてやれ。趙雲の誠実さは幸村にも劣らぬ」


三成のよく分からないアドバイスに、悠生は顔を真っ赤にしたまま頷いた。
傍に居た曹丕が何も口を挟まないのがまた気まずい。
これが初対面だと言うのに、相手に与えた印象は最悪である。


(趙雲どの…僕のこと、怒っているかな…)


今から、黙って旅立とうとしていたのに。
趙雲に知られてしまったら、意地でも逃がすまいと強引な手段で止められてしまいそうだ。
…だけど、それはそれで、嬉しい。
またしても、心が矛盾してしまう。
趙雲に想われている…、それだけで、体が震えてしまうぐらいに、喜びを感じているのだから。
恋を自覚した日から、どんどん趙雲のことを好きになっていく。
これでは、今にも、気持ちを押さえきれなくなってしまいそうだ。
自分にはやるべきことが、沢山あるはずなのに。


「では、さらばだ。達者でな。いずれ再びまみえることもあろうが…、その時は、同志として貴様を迎えてやろう」

「ありがとうございます…僕、三成さまのこと、大好きです!」

「だから、それは俺にではなく…まあ、良しとしよう…」


皆が笑って暮らせる世を、頑張って作ってくださいね、と続けたら、三成はフンと鼻で笑った。
当然だ、とでも言いたげだ。
曹丕はそんな三成の姿を見て、やっぱり笑っていた。

秀吉が掲げた理想が現実となる日は、きっと近く訪れるだろう。
石田三成が、曹丕と友になれたこの世界。
彼らなら、たとえ異なる道を歩もうとも、いつか必ず叶えてくれるはずだ。


 

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