栄光の宮殿



「分かってる?あなたは阿斗さんを裏切ったの!」

「黙れ妲己!悠生が信ずる主が、貴様に従うことを認めるはずがなかろう!」

「三成さんこそ黙りなさいよ!あなただって裏切り者よ。曹丕さんと仲良くやっているみたいだけど、そんなの長続きしないわ!」

「はっ、とんだお笑い草だな。人を理解せぬ貴様には分かるまい!」


悠生に浴びせられた妲己の容赦ない言葉を、三成は軽く受け流し、笑い飛ばす。
彼女に敵意を向けられる悠生を庇うように鉄扇を構えた三成は、妲己と戦う姿勢を見せた。
すぐさま、火計部隊も体勢を立て直し、三成を援護出来るよう後方に控える。


「生まれた国や時代が違う、その程度のことでも人は争うものだ、確かに愚かな生き物なのだろう。だが、理想の実現のためならば、いくらだって手を取り合えるのだよ」

「バカみたい!!仲良しごっこなんて気色悪いだけじゃない。あなた達の甘っちょろい考えは、遠呂智様には通用しないわ」

「俺達は何としても貴様を止める。お飯事ではないことを証明してやろう」


次々と、旗が立てられる。
青くはためく、そこに大きく描かれた"魏"の文字。
三成は一度も視線を巡らせたりはしなかったのに、曹丕の部隊が、いつの間にか周囲を幾重にも取り囲んでいた。
火計を成功させるため、敵を近づけぬよう一役買っていてくれたのだ。
三成が助けを求めずとも、曹丕は自らの意志で援護に出た。
妲己には今、勇気づけてくれる仲間が居ない。
古志城を包む炎は激しさを増し、城内に逃げることも叶わない。


「仕舞だ、妲己よ。私が今楽にしてやろう」

「曹丕さんまで私をバカにするの?もう絶対に許さない!!」

「いつまでも喚いていろ。これ以上、我らの世を乱させる訳にはいかぬ」


曹丕の冷静さが、逆に妲己を追い詰める。
味方を駒扱いし続けていた妲己には、理解することは出来ないだろう。
心から信頼できる人に出会えていないから。
三成の語る言葉全てに嫌悪感を抱く、世から見放された、哀れな傾国の美女。


「邪魔を…しないでよ…私と遠呂智様は、自由になりたかっただけ!!今まで縛られていたんだもの、やりたいことをやったって良いじゃない!!」


どうして、皆で仲良く暮らせないのだろう。
全ての人々が理解し合える世なんて、有り得ないのだろうか。


 

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