栄光の宮殿



赤兎と共に身を隠していたマサムネと合流し、悠生は改めて呂布を見上げた。
彼もまた、じっと悠生を見ていたが、その瞳は瞬きすらしない。
これから、彼は何処へ行くのだろうか。
魏軍を蹴散らし、遠呂智と戦いに行く?
それとも、咲良が役目を終えるのを見届け、貂蝉を連れて新たな旅に出るつもり?


「泣くな。貴様は弱い。もっと強くなれ」

「はい。咲良ちゃんの弟として、恥ずかしくないように…」

「それで良い。では、俺は先に行く。まずは貂蝉を連れ戻しにな!」


呂布は赤兎に跨ると、壊れた武器を手に、悠生を残して魏軍の群れの中に突撃していった。
その勇ましいこと、悠生は呂布と赤兎から目が逸らせない。
騎馬突撃をするだけで、雑兵たちは弾き飛ばされてしまう。
だが、呂布に戦う気はないので、大軍を押しのけて逃亡するのは簡単なことだった。


「悠生、無事だったか。貴様…大坂湾で呉軍に捕らえられ、呉蜀連合軍に加わったと聞いたが…呂布に連れ回されていたのか?」

「三成さま…、その…いろいろあって…」

「まあ良い。見れば、呂布は相当手負いだった。先に蜀軍が痛めつけていたようだからな。恐らく呂布は逃亡したのだろう」


冷静に分析する三成だが、悠生は此方に向けて冷たい視線を送る曹丕と目が合い、体を硬直させた。
何だこのガキは、とでも言いたげな曹丕。
無理もないだろう、一見すれば、戦う力もなさそうな子供が、呂布の傍に居たのだから。


「三成よ、お前の子か」

「フン、綺麗な顔がよく似ているだろう?」

「そうか、お前が贔屓にしていたという妲己の手駒か」


冗談を冗談で返す三成だったが、曹丕は顔色一つ変えず、悠生を観察し始めるのだ。
余りに強い眼差しに悠生はたじろぎ、視線は徐々に下向いていく。
無礼だと罵られかねない態度であったが、曹丕が鼻で笑うより先に、三成が何かを思い付いたように声を上げた。


「曹丕、今から俺は悠生を連れ、火計を行う。忌ま忌ましい古志城を灰にしてみせよう」

「はっ、何を言うかと思えば…」

「無謀だと思ったか?夷陵でホウ統の策を火計にて未然に防いだのは、この悠生の手柄なのだぞ」


 

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