煌めきの祝福



(僕たちも…暫くお別れだね…)


遠呂智を倒す前から、次の戦いに目を向ける悠生は、趙雲と共に蜀へ戻ることは出来なかった。
たくさん悩んできたが、与えられるはずだった幸せを諦めてでも、新たな旅立ちをすると心に決めている。
阿斗を…劉禅を暗愚と呼ばせないため、そして、世界に殉ずるほか無かった咲良だけを苦しめたくないという、悠生の悲痛な決意だった。
だが、永遠の別れではないことは確かだ。
いつか、本当の平和を手に入れたら、必ず帰ると約束するから。


「あの、呂布どの、ちょっと目を瞑っていてくれませんか…?すぐに終わりますから…!」

「ふん、早くしろ」


呂布は律儀にも悠生の願いを聞き入れ、背を向けてくれる。
心の内で感謝し、悠生は薄く波打つ趙雲の胸に手をついて、覆い被さった。


「趙雲どの…ごめんなさい…」


本当は、離れたくない、ずっと傍にいたい。
でもそれはただの我が儘で、甘えてはいけないと自分に言い聞かせる。
与えられた愛に応えることも出来ず、まともに想いを告げることも叶わなかった。
泣きそうになりながら、悠生はなんとか謝罪の言葉だけを口にする。
そして、半開きの趙雲の唇に、そっとキスを落とした。
柔らかく触れ、微かな熱を感じる。
途端に、苦しいほどに胸がいっぱいになった。


「ずっと…趙雲どのだけを…想っていますから…」


誰にも聞こえないように、心の奥底に秘めていた恋心を明かす。
ついに一粒、涙がこぼれてしまった。
それは趙雲の鼻にぽたっと落ちて、その僅かな感覚に、小さく呻きながら身じろぐのだ。


「ばいばい、趙雲どの」


悠生は趙雲の瞳が開く前に、呂布の元へ駆け出した。
彼の手が悠生の手首を掴んだ瞬間、またもや目も開けていられないほどの眩い光が生まれたのだ。
その光の先に、咲良が待っている。
故郷を思い出させる、唯一の存在。
悠生はどこか夢心地で、溢れる光に身を任せるだけだった。



END

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