煌めきの祝福



互いに一歩も退かず、風を切ってぶつかり合う龍と鬼神。
かきん!!とひっきりなしに金属音が響き、火花が散る。
己の信ずる道のため、大事な人のため、その命を懸けて、彼らは刃を交えている。


(趙雲どの…負けないで…!)


自分には、直接手を出すことが出来ない。
それならばと、悠生は胸の前で手を組み、強く願いを込めた。
思い浮かべるのは、悠生を慈しみ、見守っていてくれた西王母の姿であった。

少しだけで良いから、彼に力を貸してください。
何度も繰り返して、悠生は願い事を呟いた。
どうか負けないでほしい、傷付かないでほしい…と不安な気持ちで趙雲の勝利を願っていたが、そのうち、趙雲の無事を祈る言葉に変わっていった。


『悠生…弓を持ちなさい。あなたの愛しい人を助けたいのならば』


そのような声が、直接悠生の頭の中に響いた。
間違いなくそれは、西王母の声であった。
はっとした悠生は辺りを見渡したが、求めていた彼女の姿は何処にも見えない。だが…指先が、微かに熱を持っていた。
不思議に思って見てみれば、指輪の痕にそって緑色に輝く細い線がじんわりと浮かび上がっていた。


(趙雲どのを助けたいなら…弓を持って…)


悠生は言われるままに幻の弓と矢を形作り、宙に向け構える。
西王母に導かれるようにして、悠生は狙いを定めることなく弓を引いた。
まるで彗星のようなまばゆい光となった矢は、呂布を貫くことはなく、趙雲目掛けて真っ直ぐに飛んでいく。


「趙雲どの……!?」


ぱあん!と何かが弾けるような音と共に、光に包まれた趙雲の姿が消えてしまった。
悠生は思わず趙雲の名を叫ぶが、何処からも返事は戻ってこない。
だが、すぐに居所は掴めた。
呂布も、悠生も、揃って空を見上げる。

光を失った闇色の空に出現した、新たな灯火。
太陽でも月でもない、熱を持たないその輝きこそが、趙雲そのものだった。


(趙雲どのが…覚醒してる…!?)


まさかとは思ったが、悠生が趙雲を見間違えるはずがない。
三国時代の武将とは思えぬ、美しく変貌したその姿。
凍てついた氷を纏ったかのような、冷たい印象を受ける。
その眼差しは鋭く、真っ直ぐに呂布を見下ろしていた。


 

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