煌めきの祝福



趙雲、そして幸村が先頭に立ち、二手に別れ、古志城へ向けて進軍を開始した。
噴火砲砦の制圧は呉軍に任せてある。
彼らがやり遂げてくれることを信じ、蜀軍はただ、目の前の道を切り開けば良い。

悠生は趙雲に従い、弓で敵を蹴散らしながら、遠呂智の元を目指していた。
当然のように幻影の弓を用い、迫り来る遠呂智兵を緑色の光の粒子に変える。
やはり、他者を傷つける度胸が無く、敵の足場を崩すことしか出来ないが、それでも趙雲は、悠生が得た力に驚いていた。
同時に、とても悲しそうな顔をしていた。
嫌でも戦わねばならなかった、武器を持たねばならなかった悠生を哀れんでいるのだ。
阿斗の隣で、彼を支えるためだけに生きていくはずだったのに。


(こんな悲しみを繰り返さないために…全てを終わらせるために、戦わなくちゃならないんだ)


趙雲は悠生を気にし、時折、心配げに見ていたが、悠生は戦が始まってからはあまり趙雲のことを視界に入れないようにしていた。
わざとらしくならないようにとつとめたが、一度も目が合わないのは可笑しい。
だが、今は駄目なのだ。
槍を振るう趙雲があまりにも格好良くて…、見取れてしまうから。

ゲームでは何度も目にしていたはずなのに、いざ目の前にすると…胸が高鳴るばかりである。
憧れから生まれるときめき、ではなくなってしまったから困るのだ。


(も、バカだ…っ…こんなときに…)


恋心など、戦場には必要の無い感情だ。
頬をぱちんと叩き、悠生は再び前を向く。
此処で死んでは、元も子もない。
奇跡的に生き繋いだこの命を、無駄にしてはならない。

マサムネの導きにより、悠生は自らに傷を負うこともなく、敵を寄せ付けずに勇ましく進軍する部隊に続くことが出来る。


「悠生殿。何があっても、貴方のことを守ってみせよう。不甲斐ない私だが…、どうか、信じてくれ」


投げ掛けられた趙雲の言葉は、驚くほどに弱気だった。
どんな顔をしているのか気になって、悠生はマサムネに少し歩みを速めるよう命じて、趙雲の隣を走る。
弱々しい口調とは裏腹に、真っ直ぐ前を見つめる、真剣な横顔。

趙雲は今までずっと、悠生が幸村の槍に貫かれたことで、己を責めていたのだ。
傍に居たのに、止められなかったことを悔いている。
趙雲の悲痛な心を感じ取った悠生は、僅かに口元を緩ませた。
どこまでも優しいこの男が、大好きだ。
不甲斐ないだなんて、思うはずがないだろう。


「今度は、僕が趙雲どのを守ります!守られているだけじゃ、駄目だと思うから…」

「悠生殿…ああ、そうだな…ありがとう…」


胸がとてもあたたかくなる。
戦場であることを忘れてしまいそうなほど、悠生は穏やかな気持ちになれた。
守られるだけの弱い子供ではいたくない。
これからはもっと、守ってあげたいのだ。
阿斗の国を、趙雲が生きる未来を。


 

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