偽りなき誠



「趙雲どの、本当に良いんですか?少しぐらいは、顔を出した方が…」

「貴方を一人にしたくはない。それに…私は今、幸村殿に妬いている。意味が分かるかな?」

「そ…それは…」


大好きだと、口にしたことがまずかったのだろう。
嫉妬心を隠そうともせず、はっきりと言ってしまう趙雲に、悠生は顔を赤くし、俯くほかなかった。
まだ、悠生は想いを言葉にして伝えられていない。
このドキドキに耐え切れる自信は無く、すぐに告白をしたかったが、趙雲が、全ての戦いが終わった後にしてほしいと言ったから…、自分達の今の関係は複雑なものである。


「私達は"まだ"恋仲ではない。だが、悠生殿が他の男に好意を寄せている姿を見ると、じっとしていられないのだ」

「だったら…今すぐ、聞いてほしいです。僕が趙雲どのを特別だって、想っていることを…」


趙雲の手をそっと握り、悠生は羞恥に耐え、言葉を紡ごうとするが、その手を強く引かれたと思ったら、次の瞬間には趙雲の腕に抱かれていた。
それだけでも胸が高鳴ってしまうと言うのに、趙雲は悠生の言葉を封じようとするかのように、唇で唇を塞ぐ。


「ん……!」


触れるだけ、たったそれだけの軽い口付けでも、悠生は瞳を潤ませ、ぎゅうと趙雲の服にしがみつく。
恥ずかしい、だけど彼のあたたかさが心地好くて…ずっとこうしていたいと思ってしまう。
趙雲のことが好きなのだと、より強く実感する。
ただ、どう応えたら良いかは分からなくて、悠生は趙雲に縋り付いて、このキスを心から受け入れていることを伝えようとした。


「…本当に可愛らしいな、貴方は」

「ちょ…趙雲どの…」

「すまないが今は…これが限界だ。早く戦を終わらせたいものだ。何の気兼ねも無く、悠生殿に口付けをすることが出来るように」


囁くような、少し掠れた声でそんな言葉を耳に吹き込まれると、鼓動はより速まり、悠生は心臓が壊れてしまうのではないかと不安になる。
愛しい趙雲の腕の中で死ねるなら、それはそれで幸せなのかもしれないと、おかしなことを考えながら…、悠生は静かに、目を閉じた。



END

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