偽りなき誠
「僕は、幸村どののことも尊敬していますし、ずっと前から大好きだったんです。だから…」
「ななっ!?い、いけません!!趙雲殿の前でそのようなことをおっしゃっては…!!」
慌てふためき、突然立ち上がって何やら喚き立てる幸村に、悠生はぽかんとするが、趙雲は困ったように笑い、幸村に声をかける。
幸村ほどではないが、趙雲も顔を赤くしていた。
「幸村殿、あまり気を遣わないでくれ。私の想いは既に伝えてあるゆえ…」
「そ、そうでしたか…!」
二人の様子から、悠生は趙雲が幸村に"恋の相談"らしきものをしていたことを感じ取る。
趙雲の想い人が悠生であると知っているからこそ、幸村はこれほどに動揺しているのだ。
未だに、趙雲に"好き"と言葉に出来ていない悠生は気恥ずかしくなるが、それは趙雲が言わせてくれないからだと、無理矢理に納得する。
「あの…幸村どの…?」
「も、申し訳ありません。ええ、悠生殿が望まれずとも、私はこれからも趙雲殿や蜀の皆様方と友好関係を築いていきたいと思っております。勿論、悠生殿とも…」
「はい…ありがとうございます。嬉しいです!」
幸村と仲直りが出来たことが嬉しくて、悠生は趙雲と幸村が何やら気まずそうにしていることには気が付かなかった。
悠生達がやっと話を終えた時、再び様子を見に来たらしい尚香が、決戦前の宴を催しているから是非顔を出してほしいと三人に告げた。
幸村は素直に頷いたが、悠生は宴会場で咲良に出くわすことを恐れ、申し訳ありませんがと断った。
すると趙雲も、「私もご遠慮致します」と頭を下げたのである。
「趙雲は黄悠と一緒にいてくれるのね?それなら安心だわ。任せるわよ」
悠生の答えなど考えずとも分かりきっていたのだろう、微笑んだ尚香は幸村を引っ張ると、よく休むようにと悠生に告げ、部屋から出ていってしまった。
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