このままの二人



「趙雲どの…聞いてください。僕は、初めて、阿斗以外の人を、好きになってしまったんです…ずっと阿斗が一番だったのに、その人のことを考えると胸が苦しくて…どうして良いか分からなくなる…」

「悠生殿に懸想する者が…?いや、阿斗様がお気になさるとは思わないが…しかし…いったい誰を…」

「だって…僕は…趙雲どのにずっと、会いたかったんです…!だけど、嬉しいはずなのに…涙が止まらないのは…どうしてでしょうか。どうして僕は…こんなに…趙雲どののことを…」

「っ……」


回りくどく、少々意地の悪い悠生の言葉に、趙雲は息を呑んだ。
いくら鈍感な男でも気が付くだろう、悠生の純な恋心は、己に向けられたものだと。

今まで見たこともないぐらいに、趙雲は赤面していた。
彼の気持ちが、三成の言葉通りだったのだと実感し、肩の力が抜けた。
嬉しかったのだ、涙は止まらないけれど。

今こそ想いを伝えようと心に決めた悠生は、改めて趙雲を見詰め、震える唇を開いた。


「僕は、趙雲どののことが…ずっと…っ…ん…」


今日まで忘れもしなかった…彼の熱さを感じていた。
好きと伝えるはずだったその一言は、趙雲の口付けに抑え込まれてしまった。
あの時と同じように、触れるだけの口付け。
以前と違うのは、自然と悠生も、趙雲とのキスを望んでいたということだけだ。

悠生は静かに目を閉じ、唇の熱を追う。
互いの唇を重ね合わせるだけの口付けが、とても甘かった。
長くて短いキスが終わり、強く強く抱き締められたら、鼓動はいっそう速まるばかりだった。


「こうしていれば…直に涙も止まるだろう?」

「そ…うですね…」

「しかし、悠生殿…貴方は私を、良い大人では居させてくれないのだな」


深く抱きすくめられたまま、悠生は趙雲の溜め息混じりの声を聞く。
緊張しているのだ、英雄と呼ばれた趙雲が。
それが意外で…だけど、可愛いと思ってしまった。


「貴方が成長するまで、待つつもりだったのだが…悠生殿がいけないのだよ。そうやって私を、煽るのだから…」

「あ、煽ってなんて…っ…」

「恋い焦がれていたのは、私とて同じだ。傷付いた貴方を手離せねばならなかったあの時、生きた心地がしなかった…。二度と、貴方を離しはしない…今度こそ私に、護らせてはくれないか?」


耳元で、唇が掠めるほど近くで囁かれる。
勿体無いぐらいの、愛の言葉を。
傍に居てほしい、と趙雲は願ってくれるのだ。
これほど情熱的な趙雲の姿を、知っている人は居るのだろうか。
悠生の言葉を遮ったのは、きっと、趙雲が先に想いを伝えたかったから。


 

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