白の面影



「悠久…永遠なるもの。あなたに与えられた本当の名は"盤古"。この世界を作ったのは、他ならぬあなたなの」

「……?僕が…?」

「小覇王が仙人に殺されたとき、私は思ったわ。今、盤古の残した世界は悲鳴を上げている…悲しみが溢れている。ごめんなさい。私が予言を信じるならば、私自身が手を降さなければならなかったの。私は盤古の生まれ変わりであるあなたを…あなたにとって異世界であるこの国を救うために、強引にあなたを引き込んだのよ」


悠久なる、盤古。
そして西王母…、彼女は孫策の死に憂い…予言を信じ、困窮しつつあった世界を救うためにと、悠生と咲良を引き込んだ張本人であった。
今ならはっきりと分かる。
あの、光と声は。
悠生達をこの世界にいざなったのは、西王母だったのだ。

西王母は酷く傷ついた顔をしていた。
だから、悠生は思うことがあっても、何も言えなくなってしまった。
世界を救うため、予言を実行させるため、力を持つ西王母は、盤古の生まれ変わりを過去の世界へ呼び戻した。
勿論、盤古の再臨を世界が乱れる原因としていた太公望らは反発したことだろう。
だが、自分が盤古の生まれ変わりで同じような力を持っていると言うのは、矛盾が生じる。
無双はあくまでも架空のものであり、史実ではなかったのだ。


「盤古という人は、いつかこの世界の未来に生まれることになるもう一人の僕の、前世なんでしょう?じゃあ、今此処に居る僕は何なんでしょうか…」

「いいえ…あなたはもう、完全にこの世界の人間よ。盤古と未来の盤古との間に、あなたが入ったというだけ。私が並行世界のあなたを選んだのは…あなたが誰よりも、"無双"を愛してくれていたから」

「……、」


西王母の言葉に、悠生は何故だか泣きそうになってしまった。
嬉しいのか、悲しいのかも分からない。


 

[ 343/417 ]

[] []
[]
[栞を挟む]



×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -