白の面影



体が熱い、酷くだるい。
このまま消えて無くなってしまいそうだった。

樊城にて濁流に呑まれながらも関平の手助けにより無事に生還した悠生は、なんとか遠呂智軍と合流出来たものの、結局戦には負け、被害は甚大であった。
必死に拠点としていた城に後退した遠呂智軍だが、そこに、曹丕と三成の元から脱走したと噂されていた妲己が登場したから始末が悪い。
樊城に遅参した孫権は咎めを受けて軟禁、逃げ出した者たちはその場で捕らえられ処断されるなど、重い罰を受けた。

悠生はと言えば…、妲己と直接顔を合わせる前に、疲労が限界に達し、ふっと気を失ってしまったのだった。
びしょ濡れのまま着替えずにいたため、最悪なタイミングで風邪を引いてしまったらしい。
だが、悠生は関平と別れた後、弓を片手に戦場を走り、紛いなりにも反乱軍と交戦していたため、敗戦の責を負わずに済んだのだった。


(気持ち悪い……)


全身が鈍い痛みを訴えている。
体は燃えそうなほど熱を持っているのに、冷や汗が止まらない。
呼吸さえ苦しくて、今にも喉が潰れそうだった。

悠生が次に目を覚ましたとき、まず始めに視界に映ったのは、心配そうに眉を寄せる黄皓だった。
見慣れた顔に、ほっと安心して息を吐く。
手を握られていたことに気付き、悠生は辛かったが微笑んで見せた。
住居として与えられた城に、知らぬ間に帰ってきたのかと思ったのだが、天井は見知ったものではない。


「水を飲まれますか?喉が渇いたでしょう」

「は、い…ありがと…ございます…」

「そのままで良いですよ。無理をして起きあがってはなりません」


声は掠れてしまうし、喉が張り付き痛い。
思ったよりも、容態は酷いようだった。
黄皓はそのままで良いと言うが、これ以上迷惑をかけたくなくて、悠生は無理をして起き上がる。
そして少しずつ、冷たい水を舐めるように飲んだ。
体の中がひんやりとして心地よかった。

黄皓はきっと、悠生が気を失ってからずっと、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれたのだろう。
熱のためにぼうっとしながらも、悠生は湧き上がる疑問をぶつけようとするが、頭が上手く回らない。


 

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