いにしえの呪い



「美雪さん…僕…美雪さんに会いたい…僕にとっては、もう一人のお姉ちゃんだったんです」

「実姉である落涙との再会は拒む貴公が、よく言えたものだな。だが、美雪にはもう会えぬと思っていた方が良いだろう。あの娘は人とは違うのだ」

「違うって…何がですか…?」

「己に問うてみてはどうかな?切に願えば、美雪も応えてくれると思うが」


太公望は、言ってはくれないのか。
聞いてばかりいないで自分でどうにかしろ、と丸投げされた気分である。
血の繋がった咲良よりも美雪を選んだことを、責めている訳ではあるまい。
もう、咲良とは決別すると誓ったのだ、だから、会いたくたって会えるはずがない。
…どんな顔をしていいかも、分からない。


「そう、私は落涙に…咲良について話に来たのだ。軍神の子よ、貴公も咲良という娘を知っていよう?」

「ええ…、一時ではありましたが、悠生殿の姉上である咲良殿とは、信長様の元で共に戦いました」

「ならば話は早い。これから話すことは他言無用だ。決して口にしてはならぬ。咲良を惑わせる要素を増やす訳にはいかぬからな」


太公望は何度も念を押すが、関平はあまり事態が呑み込めていないようだった。
悠生の知る限り、咲良の辿った道には信長と孫策が居た。
信長の元にある関平と咲良が出会っていても、何もおかしくはないのだ。
それに咲良は、己が遠呂智を眠らせる役目を持った奏者であると関平には伝えなかったらしい。
心優しい関平に心配をかけるのが、嫌だったのだろうか、それとも…誰かに相談することも出来ないくらい、思い詰めているのだろうか。


「まず初めに言っておくが、咲良が旋律を奏でなければ、遠呂智の降臨によって蘇りし人の子ら、即ち軍神の子よ、貴公も黄泉へと返ることとなる」

「なっ…!?つまり拙者たちが、武で遠呂智を倒しては…拙者も父上も、再び死すると言うことですか!?」

「そう、ゆえに咲良の子守歌は必須である。貴公ら人の子は咲良を遠呂智の元へ導き、奴の力を削ぎ、笛を吹く機会を用意するだけで良い」


悠生は何となく想像していたが、衝撃的な事実を突きつけられた関平は放心している。
己の力で遠呂智を倒し、世の安寧を取り戻す気でいたのだから仕方がないだろう。
咲良の笛が、蘇った人間達の命運を握っている。
初めにその前提を聞かされたため、次に告げられた更なる事実が、重く重くのし掛かってきた。


 

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