最も美しい絆



現在、咲良は孫策の傍に身を潜めている。
ならば、少しは安心出来るが…束になって襲われては太刀打ち出来ないだろう。
もっと、守りの壁を厚くしなくては。
降臨した魔王に抗う仲間を集め、早急に遠呂智を討ってもらわなければ、咲良が殺されてしまうかもしれない。
そこで悠生は、やっと、呂布たちの思惑に気付くことが出来た。


「貂蝉どのは、咲良ちゃんを助けに行くために…」

「その通りですわ。私は外から、奉先様は内から咲良様をお守りすると」


貂蝉の瞳は真っ直ぐだった。
きっと、董卓と呂布との間で揺れていた時よりも、今の貂蝉は強い信念を持っているのだろう。
大切な友のために、出来ることをしたい。
こんな乱世でも、他を気遣うことが出来る…優しい人だ。
悠生も、大好きな阿斗のためなら何だって出来ると自負している。
同じぐらい、貂蝉は咲良を思っているのだ。
自分がどんな目に合っても構わないと思える、それこそが、本当の友情だ。

しかし、そのような貂蝉の願いを、呂布が易々と許したのにも驚かされる。
呂布も、朧気ながら咲良のことを覚えていて、あまり顔には出さないが感謝をしていたらしい。
このまま上手く事が運べば、咲良の傍には鉄壁の守りが出来ただろうに。


「そして、怪しまれないようにと見せ掛けの脱走劇を演じるつもりでいたのですが…」

「フン、つまり、俺達が貴様に接触したために、呂布は計画を水の泡とした…そう言うことか」

「いいえ。私も、まさか、このような乱戦になるとは、想像もしておりませんでした…」


呂布の逆鱗に触れたのは間違いなく三成たちだ。
善意がこのような事態を引き起こすとは…三成はさぞかし気分を害したことだろう。

貂蝉の真意を聞くことが出来た今、とにかく、早く逃げてもらわなければならない。
冷静な判断が出来ない状態にある呂布は、きっと容赦なく三成を殺すだろう。
それでは、曲者揃いの魏軍・総大将となった曹丕の支えとなる者が居なくなり、物語に多大なる影響を来してしまう。


「あたしたちが道を切り開いてあげるから、あなたは早く逃げるんだよ。三成は本当は優しい子だから、頼って良いからね」

「ああ…、ありがとうございます…」


ねねに心を許したらしい貂蝉は、深く頭を下げていた。
三成は未だ不本意そうだったが、ねねに期待されること自体は、悪くは思っていないようだ。

悠生も弓を構え、彼女の逃亡を手助けすることを決める。
しかし、悠生やねねが堂々と援護しては、せっかくの貂蝉の計画が総崩れになる。
目立たない程度に、遠呂智軍の足止めをする、そして、暴走する呂布を止める…それが最優先か。


  

[ 321/417 ]

[] []
[]
[栞を挟む]



×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -