最も美しい絆



(っ…呂布どのは何で僕なんかを連れてきたんだよ…肩も痛いし…!)


ぴりぴりと肩に走る電流のような痛みが不快で、悠生は歯を食いしばる。
暫く落ち着いていたのに、鈍く痛み始めるから困ってしまった。
気を抜けば体の力も抜けて、手を離したら幻の弓はふっと姿を消してしまう。
悠生自身の気力が途切れては、いくら指先に祈りを込めても、弓矢は具現化されないのだ。


(っ…しっかりしろ!今は誰も守ってくれないんだから!)


こんなときに貧血になるとは情けない。
くらりと立ち眩みがした後、近くの木に手を突いた悠生だったが、必死に自身を奮い立たせようとする。
それでも、このままではまずいと思う心が危険信号を出していた。
武器も持たず、敵に背を向けるなんて…どうぞ斬ってくださいと言っているようなものだ。


「悠生、大丈夫かい!?」

「わ!?お、おねねさま…!」


逆さまの、愛らしい顔が目の前にある。
悠生が手を突いていた木の枝に宙吊りになり、ぐるんと回転して現れたのは、心配そうに見送りをしてくれたはずのねねだった。
悠生は驚いて目をぱちぱちさせるが、ねねは柔らかくにっこりと微笑む。


「あたし、心配で心配で居ても立ってもいられなくて、追い掛けてきたんだよ!可哀相に、真っ青じゃないかい…」

「おねねさま…ありがとうございます…僕、まだ頑張れます」

「じゃあ、一緒に行こうかねぇ!隠密に調べさせたら、逃げ出した貂蝉って娘を三成が保護したらしいんだよ。あたしたちは三成からその娘を取り返さなければならないんだね…気が進まないけれど、悠生は行くつもりなんだね?」


肩と頭は痛むが、ねねから沢山の元気を貰えた。
ひとりじゃないなら、まだまだ頑張れる。
じっ、とねねの大きな瞳に見つめられ、悠生は力強く頷くと共に、ひとつ訂正をするのも忘れない。
貂蝉を捕まえに行くのではない、ただ話をしに行くだけだ、と。

ねねが連れてきた忍びたちに守られ、悠生は難なく貂蝉の元へ辿り着いた。
見計らったかのように、最後の関を突破する寸前で彼女に追い付くことが出来たのだ。
勿論その貂蝉を守る集団の中には三成も居て、予告も無く宙から飛び降りたねねと悠生の姿を見て、彼は見る見るうちに眉を顰めるのだった。


 

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