最も美しい絆



赤兎が駆け抜けた先に、ゲームでも見慣れた五関があった。
貂蝉はもうずっと向こうに居るのだろう。
既に遠呂智軍の追っ手が追い付いて、付近は彼らと貂蝉の護衛に着いていった兵達によって激戦地帯となっていた。
しかし、貂蝉に付き従った護衛の数はほんの僅かなはずなのだが、どうして此処まで人が群れているのだろうか。

それもそのはず、貂蝉は偶然、遠呂智軍から離反した石田三成の軍勢に出会い、命を救われる。
ゲーム的に、この展開は間違いではない。
つまり悠生は、先日別れを告げたばかりの三成と、今度は敵として再会しなければならないということだ。


「ふん、カスども…群れるだけしか能がないのか、哀れだな」

「……、」


すぐそこに、貂蝉が居るというのに。
貂蝉のことのなら我を忘れ、わき目も振らず、まるで子供のように…がむしゃらに追い掛けていくのが呂布ではないのか。
どうして、落ち着いていられるのだ。
やはり変だ、呂布らしくもない。

堂々と呂布が参上すると、敵味方問わずに小さな悲鳴が上がり、皆は揃って恐れおののく。
遠呂智兵の一人、使い番が、赤兎に跨る呂布の目前で跪き、戦況を伝えた。


「貂蝉様、第三の関を突破したところでありますが、どうやら石田三成の軍勢が貂蝉様を連れ去ろうとしているご様子!」

「何だと?そのような話、俺は聞いていないぞ!?」


貂蝉に関する新たな情報を聞いた途端、呂布が顔色を変えたため、悠生はまた首を捻った。
呂布がこれほど憤る意味が分からないのだ。
彼にとって、こんなことは予想外だった、それは当たり前だ。
三成が現れたのは確かに偶然なのだろう。
曹丕と共に、小田原城で妲己を捕らえた三成は、次の目的地に向かうまでの間、曹丕と別行動をとっていたのかもしれない。

だが、呂布のその物言いでは、こうなるはずではなかった…つまり、別の計画が緻密に練られていた、とも受け取れる。
しかも、貂蝉との間にだ。
二人の間に密約が交わされていた、そうでなければこの、呂布のこれまでの冷静さが説明出来ないのだ。


「よくも俺の貂蝉を…!!石田三成、許さん!!」

「う…わっ!」


怒りに任せ、呂布がいきなり手綱を引いたため、悠生は前のめって赤兎の鬣に顔をぶつけてしまった。
こんな状態の呂布の傍に居たら、巻き込まれて殺されてしまう!
冷や汗を流しながらも、どうにか危機的状況を打開しようと思案した悠生だが、この速さだ、手を離して落馬すればただでは済まない。

方天画戟を振り回しながら騎馬突撃する呂布には誰も近付けず、大した弊害も無く、あっという間に三番目の関を越えてしまった。
どれほどの時間、赤兎にしがみついていたのかも分からず、目を開け続けることも困難だった悠生だが、必死に前を向こうとしていた時、漸く見知った顔を見つける。


 

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