獣の行く道



「志を同じくすれば、いつか再びまみえましょう?私だって悠生殿と再会出来たのですから」


あっけらかんと黄皓は口にして、これまた悠生を驚かせるか、ねねが満面の笑みで頷くため、その後は喜びを素直に受け入れた。
同じ世界に生きているのだから、心はいつも、すぐ傍にある。
そう考えれば、この不安や寂しさは、綺麗に消えてしまいそうだ。


「っ……い…!」

「悠生殿?また肩が痛むのですか?」

「肩って、この間負った怪我のことかい!?」


急に、塞がったはずの肩の傷口がじんじんと痛み始め、悠生は顔をしかめた。
刺すような鋭い痛みではなく、熱を孕んだかのように鈍く痛むのだ。
心配性のねねは大慌てだが、黄皓は至って冷静に、悠生の肩を撫でる。


「実は昨夜から、悠生殿は肩の痛みに苦しまれていたのです。傷口は綺麗に塞がっているというのに…」


黄皓は悠生の肩に刻まれた入れ墨を思い出しているのだろう、痛ましいと顔を歪め、ねねに事情を説明するが、不可解な話だ。
実際、昨夜は痛みによってほとんど眠ることが出来ず、悠生は黄皓に一睡もさせなかったようなものなのだ。

女禍から受け継いだ小春の術により、悠生の肩に残っていた深い刺し傷の痕は一瞬にして消えた。
それでも蛇の入れ墨は残っていたが、これまで違和感を得ることは無かったのだ。
昨晩、寝台の上で痛みに呻いていた悠生だが、黄皓に薬を塗ってもらい、包帯を巻いて少し落ち着いたと思ったら、またもこの様である。


「遠呂智によって残された入れ墨ならば、やはり遠呂智にしか痛みを取り除けないのでは…?」

「じゃあ、遠呂智にお願いしに行くんだよ!このままじゃ悠生が可哀想だよ…」

「おねね殿は無茶を仰る…。我々が遠呂智に謁見など出来ましょうか」


暫くさすられていれば、痛みは少しずつ緩和していく。
一時的なものだろう、今はまだ。
日に日に痛みが酷くなっていくのだとしたら、流石に勘弁してもらいたいが…

これからのことを思いうなだれていた悠生だが、予告もなく乱暴に開けられた扉の音に、皆は一斉に其方を見た。
人を訪ねるにしては些か無礼な態度では…とも言えないだろう、客人は、黒光りしたオーラが見えそうな、鬼神・呂布だったのだから。


 

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