始まりの夜明け



「喜ぶと良いぞ。そなたを今から、私の義弟にしようと思う。ゆえにこれからずっと、私の隣に居てはくれないか?」

「な、なんで…!?僕なんか、」

「なんか、と申すな。私は…悠生が欲しいのだ!先に言っておくがな、そなたには拒否権は無い」


顔が熱い、また熱が出ているかのようだ。
友達など数えるほども出来なかった自分が、こんなにも情熱的な言葉を貰うことになるとは、夢にも思わなかったのだ。
阿斗の告白紛いの台詞に動揺した悠生は、思わず視線を逸らし、趙雲に助けを求めたが、彼もまた笑みを浮かべるだけだった。


「阿斗様だけではない。私にも、悠生殿が必要なのだよ」

「僕が…必要…?」


どうして、
何度理由を説明されたって、いつまでも納得出来ないだろう。
欲しいとか、必要だとか。
僕の何を見たらそんなことを言えるの?と問いたい。
今まで一度だって…咲良にだって、言われたことがない(傍にいるのが当たり前だったから)。

嘘だったらどうしよう…、それは、杞憂に終わりそうな心配だった。
背中から伝わる阿斗の鼓動だとか、小刻みに震える腕だとか…、気付いてしまえば、じわじわと胸が熱くなった。


(僕、うれしい…んだ)


ひゅ、と喉が鳴ってしまう。
美雪に申し訳無いから、意地でも泣かないと決めたのに。
溢れ出した涙は、止められなかった。
嗚咽も我慢出来なくなり、顔を隠すこともせずに涙を流したけれど、阿斗も趙雲も、からかったりはしなかった。
ただ、優しい眼差しを向けてくれた。

この世界で生きていても、良いのだ。
とても短い時間しか許されていないのかもしれないけれど、必要としてくれる人が居る限り。
誰かのミスで作られたバグを最大限に利用して、皆にとって価値のあるものにして…。


「嬉しいんだ、けど、…プロポーズみたいで、ちょっと…複雑…」

「ぷ、ろぽ…?」

「あ、ごめん…求婚みたいだなって…」

「なっ、何を馬鹿な!!私には、星彩という人が…!!」

「あはは、変なの…阿斗、真っ赤だ」



珍しくも動揺し、赤面する阿斗の姿が何故だか可笑しくて、趙雲は静かに笑っていた。
涙で頬を濡らしながらも、阿斗に向き合う悠生の表情に、先程までの痛々しさは全く感じられなかった。
この調子なら、悠生の心の傷も順調に回復するはずだ、そのためなら阿斗も助力を惜しまないだろう。


(それに…何とも…、可愛らしいな)


寝台の上でじゃれあう子供達を見て、趙雲は微笑まずにはいられなかった。



END

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