愛しい魂



(…悲しい…夢…?)


真夜中に目を覚ましてしまった悠生は、ぼうっとする頭に残る夢を忘れないよう、思い返していた。
狭い寝台で寝返りを打ち…と言うのも、今日は阿斗と一緒に眠っているのだ。

諸葛亮と顔を合わせ、さらに趙雲ともいざこざがあった悠生はすっかり疲れ果ててしまい、昼寝をしたらいつの間にか夕方になっていた。
目が赤いのは具合が悪いからだと、心配してくれる阿斗に告げれば、「今日は添い寝してやる」と真剣な表情で見つめてくるものだから、悠生は彼の子供らしい優しさに感激したのである。


(趙雲どのが来たのはお昼の後だったし、もう10時間以上は寝た…?)


二度寝しようにも目が冴えてしまった悠生は、静かに寝息をたてる阿斗の掛布を直してやった。


…やけに、現実味を帯びた夢を見たような気がする。
阿斗と孫尚香。
夢の中で、尚香と深刻な話をしていた阿斗は今よりも幼く、生意気そうだが可愛らしかった。


(もしかして、阿斗は…孫尚香のことが…?)


孫夫人の母・呉国太の危篤の報は嘘偽り。
尚香を呉へ連れ戻そうとする、策だったのだ。
阿斗は…尚香に付き添い呉へ向かう途中、趙雲と張飛に追い付かれ、尚香とは引き離されてしまう。
劉備の嫡子を連れ出そうとした尚香は、劉備と実質的に離縁せざるを得なかった…、それが悠生が見た夢の続きと、結末である。

幼少期に負った心の傷は、深く突き刺さって痛みを生むから、取り除くのは難しい。
母親を知らずに育った阿斗が、年若い孫尚香を慕う…その感情は、きっと悠生が思うよりも深く、大きなものだったはずだ。


「ん…、悠生…」

「阿斗…どうかした?まだ寝てても大丈夫だよ?」


眠たげに目を擦る阿斗は、とても可愛い。
さらさらとした髪を撫でていたら、阿斗は胸にすがりつくように抱きついてきた。
滅多に無い、甘えを含む阿斗の行動に、悠生は小さく笑う。
気を抜いたら睡魔に負けてしまいそうなあたたかさだが、阿斗は目を伏せたまま、吐息混じりの声を出す。


 

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