永遠の花が咲く



「ちょっと落涙、どうしたの…!?」

「尚香様…これは…その…」


きらきらと眩く輝き出す咲良に、それまで喜びを分かち合っていた皆も、驚きに顔を見合わせる。
己の体を抱きしめる咲良だが、それでも光は溢れ、眩しさを増すのだ。
戦には、勝利した。
それなのに…、咲良の体は強く煌めき、おさまろうともしない。


「…落涙よ、後のことは小生らに任せよ。遠呂智の眠りは、誰にも妨げさせぬ。ゆえに安心して、光となってくれ…」

「はい…左慈さん…」


咲良の運命を知る者達…限りなく仙人に近い存在である左慈や、事情を打ち明けた孫策や周瑜、左近…そして愛する周泰。
彼らは咲良との別れを悟り、だが皆に伝えることもはばかられるのか、口を閉ざすばかりだ。
咲良の手を握った貂蝉だけは、笑みを絶やさずにいてくれる。
ありがとう…と声にならない声で呟いた。

出来ることなら、このまま、笑顔でお別れをしたい。
皆の記憶には、泣き顔ばかりが残るかもしれないけれど、せめて最後ぐらいは…満面の笑顔で。
咲良の些細な望みは、思わぬ形でぶち壊されることとなった。


「りょ、りょ、呂布だー!!」


取り戻したはずの静寂を奪い去ったのは、貂蝉が愛した男だった。
赤兎馬に跨った呂布が、脇目も振らず、一目散に駆けてくる。
その瞳は真っ直ぐ前を見据えていた。
鬼神とは思えぬほどの、純な眼差しだ。

遠呂智が眠った今、まさか此処に呂布が登場するとは…考えもしなかった。
勝利に沸いていた兵卒達はざわめき、場は混乱に陥りかける。
運が悪いことに…と言うべきか、此処には、各国の無双の猛者が集まっているのだ。
最強の武を求め、呂布が戦いを挑みに現れる可能性など、いくらでも想像出来たはずである。


「奉先様…もしや……!!咲良様、失礼致します」

「え、貂蝉さん!?」


ざわざわと取り乱す面々をよそに、貂蝉は至って真面目な顔で、なんと光を放つ咲良を抱きかかえたのだ。
美しい舞姫にお姫様抱っこをされた衝撃に、咲良は口をぱくぱくとさせる。
全くもって状況が掴めなかった。
そのまま、貂蝉はどよめく人垣を割り、驚くべき速さで大地を駆ける赤兎…呂布の直線上に立つ。


「うおおおっ!貂蝉!!」

「奉先様、こちらにっ…!!」


赤兎馬が貂蝉の横をすれ違ったまさにその瞬間、貂蝉は抱きかかえた咲良を、呂布に差し出した。
呂布は咲良の腹に手を回し、しっかりと支えると、まるで誘拐犯のように咲良を掻っ攫っていく。
減速もせず、赤兎馬が向かおうとする先は…炎上する古志城内部である。


 

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