光に満ちた死



咲良は貂蝉らと共に本陣へ残った。
小春を危険な目には遭わせられないと、彼女だけは小牧山城に残してきた。
最後の戦いが終わるのを待つことしか出来ない咲良は、不安を感じていた。
古志城から離れた位置に敷かれた本陣であるが、噴火砲の振動がここまで伝わってくるのだ。
あれが頭から直撃したら粉々になってしまう…何とも、恐ろしい兵器を作り出したものだ。

此処から先の展開は、用意された物語と余りにもかけ離れてしまっているため、正直咲良にも予想が出来ない。
ゲームのように、常に戦況を知ることが出来ないのがもどかしい。
誰かが傷つき、苦しみ…悲しい思いをしているかもしれない。
だが、皆の勝利を信じて待っている。
咲良が共に戦ってきた仲間達は、誰より強く、優しい人達だ。
きっと、大丈夫…自然と緊張に速まる鼓動を抑え、自身に言い聞かせる。


「伝令!!南方から古志城に向け、遠呂智軍が進軍しております!!このままでは我らの本陣に…」


そのような、予想外の報が届けられ、必死になって本陣を守っていた兵達は困惑を隠しきれずにいた。
各地に散らばっていた遠呂智軍の部隊が、本拠地の危機を聞き付け舞い戻ったらしい。
まさか、ほとんどの武将が古志城に向かってしまったこの状況で…
本陣の正面を守ることばかりに気を取られていたため、攻められにくい崖に覆われた背後に、目を向けることはなかった。
今、呉軍の本陣に残る無双武将は、貂蝉だけだったのだ。


「私が何としても、咲良様をお守り致します」

「貂蝉さん、私も…!」

「どうか、私にお任せを…これは、私の戦い。咲良様の友である私が、成さねばならぬ使命なのです」


震える咲良の手を握り、貂蝉は美しく笑ってみせる。
友達だから、命を懸けて守りたい…貂蝉の意志は固く、咲良の言葉をも封じる強さがあった。
貂蝉は錘を手に取ると、厳しい眼差しで前を見据える。
敵増援の勢いが激しく、こうしている間にも本陣への侵入を許してしまう。
数人の護衛兵に守られる咲良は、果敢にも敵に向かっていく貂蝉を見つめることしか出来なかった。


 

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