光に満ちた死



江戸城にて呂布に託された地図を頼りに、古志城へ辿り着いた呉軍と蜀軍の武将達は、真っ直ぐ前を見据えていた。
世の静寂を、取り戻すために。
それぞれの正義を示すため、絆の強さを証明するために、彼らは戦うのだ。

呉蜀同盟軍の指揮は諸葛亮が受け持つことになり、蜀軍は北側から遠呂智の居る本丸を目指して進軍、呉軍は南側から古志城の様々な仕掛けや砦を制圧することを指示された。
猛将揃いの呉軍に比較的安全な役目を与えたのは、今も妲己に命を狙われているであろう咲良を守らねばならないからだ。


「何だぁ、あの見るからにやばそうな兵器は!?」


孫策は素っ頓狂な声をあげる。
三国時代の彼らにとっては、大筒でさえ信じられないような革命的な兵器だった。
だが古志城には更に上を行く、恐ろしい兵器がいくつも備え付けられている。
圧倒的な存在を示していたのは、妲己の自慢の兵器・噴火砲である。
噴火砲砦を守る敵武将を打ち倒し、全てを同盟軍のものとする。
逆に古志城に向けて砲を放てば、妲己を挑発することも可能だ。


「咲良、お前は本陣で待ってろ。遠呂智の所に安全に辿り着ける道が確保出来るまで、動くなよ。良いか、絶対だぜ?」

「孫策様……」

「ごめんな…結局、お前を助ける方法を見つけられなかった…」


悲しげに顔を歪める孫策を見ていたくなくて、咲良は首を横に振り、笑みを見せた。
事情を知る周瑜や左近も、神妙な面持ちで咲良を見据えている。
彼らの優しさは、素直に受け止めようと思う。
だけど、もう後戻りは出来ないから。


「お嬢さん。俺は今もあんたのことが好きですよ。多分、これからもね」

「さ、左近さん…っ…」

「おっと、あんたの旦那が睨んでらっしゃる。さて、最後ぐらい格好いい姿を見せましょうかね!!」


此方をじっと睨む周泰をからかいつつ、左近は笑いながら去っていく。
これも、咲良を元気付けるためにと口にした、世話役の冗談?
それとも、本気で愛を囁かれている?
だが、今となってはどちらでも良い。
嘘でも本当でも、笑顔を見せてくれた方がずっと嬉しいから。


「皆で、孫呉の未来を、守りに行きましょう?」


改めて、咲良は孫策に向かってそっと投げ掛ける。
どんなときでも、笑顔を絶やさずにいれば、いつか皆も笑顔になる。
それは、孫策が何よりも得意としていたことのはず。


「ああ!俺も咲良のために、命張るぜ!!」


そう、その笑顔。
皆を元気にしてくれる、彼の太陽のような眩しい笑顔が見たかったのだ。


 

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