幸せの源



「…今は…甘寧のことを…想われていませんか…?」

「なっ…何で周泰さんがそんなことを…!?と言うか…ご存知だったんですね…驚きました…」

「……、」


いきなり、甘寧について聞かれるとは思いもしなかった。
やはり周泰は、酒に酔っているのだろう。
だから、普段は聞けずに胸の奥へ隠していた疑問を、ふと口にしてしまったのだ。


「…貴女のことを…ずっと目で追っていましたから…」

「な、なんだか…恥ずかしいです…」


そこまで分かりやすかっただろうか。
現在の夫である周泰に問われていること自体、複雑だ。
まるで浮気を咎められているかのよう。
甘寧に恋心を抱いたのは事実であるが、周泰に愛されるうちに、甘寧への想いは薄れていった。
だが、甘寧の鈴は未だに咲良の手にある。
もう落とさないようにと、笛のケースの中に大事に仕舞ったままだ。


「甘寧さんは楽しい方で…ああ見えて、とても頼れる人でした」

「…俺とは…真逆ですが…」

「私、単純なんです。目の前しか見えていませんから。一番愛してくれる方を…私も一番、愛してしまうんだと思います」


鈴は、返せないだろう。
甘寧に再会することは、恐らく無いから。
だが、彼の鈴を所持しているからとは言え、今も変わらず恋している訳ではない。
女は、単純な生き物である。
最も熱い想いを注いでくれる男を、同じように愛するようになるのだ。

咲良は静かに周泰の手を握り、微笑んだ。
酒の力によって語られた、周泰の心配事。
不安に思ってくれるのは、それだけ大事にされているということだ。


「私には…幼平様だけですよ。だから、安心してお休みください」

「…眠りたくなど…ありません…もっと貴女に…咲良に触れていたい…」

「わがまま、ですか?いけない人ですね…」


ふざけてくすくすと笑えば、周泰も一笑し、そのまま寝台に咲良を押し倒して、覆い被さった。
自然な流れで互いの唇を触れ合わせ、うっすらと口を開く。
すると周泰はより深く口付け、咲良の舌を器用に絡めとった。
…周泰とするキスは、息苦しささえも心地よくて、頭がぼうっとしてしまう。
咲良は瞳に涙を浮かばせながら、周泰の激しい口付けに応えた。


 

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