変わり行く世界



現在、この世で生路の詩の全てを知る者は、悠生だけだろう。
咲良は最後の希望を求め、諸葛亮に悠生の行方を尋ねることにした。


「諸葛亮様、弟は…今も遠呂智軍に?」

「ええ。ですが…前田慶次殿が孫策殿に果たし状を送ったでしょう?確か、悠生殿は慶次殿に従い、大坂湾へ向かったはずです」

「え…!!それじゃあ…」


諸葛亮の返答に、希望を見出したのは孫策や周瑜も同じだった。
孫策の代理として大坂湾に赴いた左近や呂蒙は、悠生が詩を知る者だと聞いていたはずだ。
そもそも、強引に遠呂智軍に従わされる悠生を、心優しい尚香が放っておくはずがない。
つまり、悠生が呉軍に降る可能性はかなり高いと言うことだ。


「我らの勝利が見えてきたな、孫策!」

「そうだな。それに、黄悠が無事で良かったぜ」


もうすぐ、悠生に会えるかもしれない。
だが、頑なに咲良との再会を拒んできた悠生のことだ、恐らく今回も、顔を合わせることは出来ないだろう。
寂しいが、それでも…、孫策が言う通り、悠生が無事でいてくれたことが、嬉しかった。

小牧山城で呉蜀の会談が行われることとなり、関羽、そして使者として趙雲や星彩らが同行することに決まった。
その間、諸葛亮らは一旦江戸城に残り、兵を整えつつ、更に仲間を集めると言う。


「悠生殿に…会えるのか…」


…そんな、趙雲の呟きが聞こえたような気がしたが、空耳だろうか。
そう言えば、彼は咲良に何か話したいことがあると言っていた。
気になるので此方から尋ねようとしたが、趙雲が見たこともない切なげな、苦しげな表情をしていたので、咲良は言葉を呑み込む。


(趙雲さん?)


何が悲しくて、目を伏せていたのだろう。
悠生のことを、大事にしてくれたのではないのか。
握った拳が震えている理由を、咲良には想像することさえ出来なかった。




END

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