変わり行く世界



呉蜀が一同に会したのはやはり、崩れかけた天守閣内の大広間であった。
本陣から呼び寄せられた大喬や小春はあまり目にしたことが無い畳に興味津々だったが、三国の男達、特に蜀の者にとってはそれどころではない。
日ノ本出身の孫市など咲良も見知った戦国の武将達が笑いながら指摘するが、生真面目な古の武将達は広々とした畳部屋であっても具足を外すはずがなく、椅子が無いからと腰を下ろすこともしなかった。


「改めて…、孫策殿。ご助勢、まことに感謝致します」

「堅苦しいのは無しだぜ、趙雲殿。これからもっと仲良くしてもらうつもりだからな!」


呉と蜀が対峙した樊城の戦いに、直接的には関わりの無かった孫策のお陰か、この会談が実現したのだ。
趙雲の他に、諸葛亮、関羽、張飛…多くの蜀の将が集まっているが、彼らは皆、劉備の天下統一を誓った忠臣達だ。
今更、孫呉と手を組むなど考えられないと、敵意を向けられても可笑しくはない。
特に関羽は…自身の処刑を決めた呉軍と、顔を合わせたくもないだろう。


「呂布に手渡された地図を見て分かる通り、古志城は相当巨大な城郭として存在しております。やはり、此処は手を組むのが得策かと」

「諸葛亮!孫呉は兄者や関平をやりやがったんだぜ!?素直に仲良しごっこが出きるかよ!!」


無抵抗な諸葛亮に掴みかかり、張飛は唾を飛ばしながら怒鳴り散らす。
義兄弟である関羽や、息子同然に可愛がっていた関平に手をかけた孫呉には協力したくない、それこそ偽りの無い、張飛の正直な気持ちだ。


「翼徳、その物言いは孫策殿に失礼であろう」

「でもよ、兄者…」

「非がどちらにあるかなど、今は考える必要は無かろう。孫策殿、拙者を孫権殿に会わせてはくれまいか。改めて、共闘を願わせていただきたい」


関羽の発言に、一同は言葉を失った。
孫呉によって処断された関羽が、自ら孫呉との共闘を望むなど…、歴史の改竄も良いところである。
だが、孫策はその言葉を待ち望んでいたかのようで、拱手したままだった関羽の手をがしっと握った。
ずたずたに砕け散った二つの国の壁が、今、修復されつつある。


 

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