変わり行く世界



「孫市様、まさか此処から妲己を狙うおつもりですか?」

「そのまさか、さ。格好良すぎるからって、俺に惚れるなよ?」


なんと無謀な、と貂蝉は驚いたように孫市を見据える。
いくら神懸かり的な銃の腕であれ、この高さでは…、しかも妲己は、目まぐるしい速さで舞い踊っているのだ。
それに、自ら目立つような行動を取れば、せっかく身を隠していたのに、妲己の目に留まってしまうのでは…と咲良は不安に思うが、孫市はそんな心配など全くお構いなく、妲己に銃口を向ける。


「一瞬で楽にしてやるぜ?」


ぱんっ!と地上目掛けて銃弾が飛んでいく。
煙を纏って放たれたそれは目で追うことも困難なほどだ。
しかし、咲良が数回目を瞬かせるうちに、弾は妲己の目前で粉々に砕けてしまった。
ぎろ、と血走った瞳が宙に向く。
確かに、あのまま行ったら妲己に命中していたはず…だが、妲己は自らの放つ殺気で、弾を打ち壊したのだ。


「おいおい、これはちっとやばいか…?」


妲己と目が合ってしまった孫市は予想外の出来事に苦笑するが、居場所を悟られてしまった咲良の動揺は孫市以上だった。
全身が凍り付くような恐怖を感じる。
ぴたりと動きを止めた妲己は、天守閣を強く睨み付け、そして思わぬ行動に出た。


「皆、反乱軍なんかどうでもいいわ。天守に狙いを定めて!あそこに居る落涙さんをぶっ潰すのよ!」

「妲己様、いけません」

「うるさいわね諸葛亮さん!殺すわよ!」


傍らに立っていた諸葛亮の忠告にも怒声を浴びせ、妲己は全軍を天守閣に向かわせようとする。
相当に余裕が無いということだろうか、怒りに我を忘れた妲己は、咲良以外のものが見えていないのだ。
妲己の指示に困惑する遠呂智軍だが、兵達は命令には背けないと渋々弓や鉄砲を天守へ向け、一斉に集中攻撃を浴びせ始める。
無数の光が重力に逆らい、まるで下から雨が降ってくるようだった。


「咲良様、早く中へ!」

「は、はいっ…」


この高さのせいで最上階まで攻撃は届かなかったが、今までの比ではないほどの衝撃に、ただ立っているのも難しい。
貂蝉が咲良を抱き、床に伏せたが、これでは氷も砕け、天守が崩壊してしまう。


 

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