愛に報いる人



「…離縁など…するつもりはありません…。考えたくもない…貴女は…俺のものだ…」

「駄目、ですよ…ちゃんと考えてください…私が居なくなったら、新しい奥方様と子をなしてください…幼平様の血が途絶えることの方がつら…あ…っ…」

「…今はまだ…貴女が俺の妻でしょう…」


周泰は自身の全てを刻み込むように、力一杯咲良を抱いた。
定めとて、こればかりは素直に受け入れるつもりは無い。
もしかしたら、咲良を失わずに済む術が見つかるかもしれない。
どうしても別れが避けられぬのなら、最後の瞬間まで、周泰は咲良を離さぬと心に決めた。


…熱くとろけた、柔らかな肉に包まれる。
前回、男を知ったばかりの娘には強すぎる快感に、咲良はあられもない声を上げた。
寝台が軋む音と、咲良の声が重なる。
彼女の淫らな姿を目にするのは自分だけだと思うと、それだけで達してしまいそうだった。

だが、子を授かりたいと願ってくれた、咲良の健気な夢を叶えてやれそうには無い。
咲良の役目は、孫呉の未来のために、必ず果たされなければならないのだ。
彼女を引き留める方法など、どこを探したって見つからないのだろう。
周泰は左近の言葉を、脳内で反芻した。
「俺もあんたも、報われない」と心に深々と刻み込まれた言葉を。


(…俺に未来は無いかもしれぬ…だが俺は…それでも…)


一際強い締め付けと尾を引くような声に、咲良が絶頂を迎えたことを知る。
低く唸った周泰も、熱い飛沫を咲良の内に叩き付け、全てを注ぎ込んだ。
呼吸が落ち着かぬままに、周泰は咲良の唇を舐め、何度も何度も愛を囁いた。
体力の乏しい咲良が完全に意識を失うまで、周泰は幾度と無く細い腰を掴み、思うままに貫いた。

咲良の意識は朦朧とし、最後は泣きながら、救いを求めるように周泰の名を呼んでいた。
だが、周泰には少しも後悔が無かった。
いっそのこと、抱き殺したって構わないとさえ思ったのだ。
今日のこの瞬間を、決して忘れさせないために…



END

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