慰めを求めて



怪我を負った咲良はすぐ、城に運びまれ治療を受けることが出来たらしいが、咲良が負った傷は、予想以上に酷かったようだ。
右腕には添え木があてがわれ、頭には白い包帯がぐるぐると巻かれている。
あまり考えたくないが…右腕の骨が折れてしまったようで、全く動かせなかった。
診断してくれた城の医者によると、骨は自然とくっつくらしい…が、三月は添え木が取れないだろう、と宣告された。


(ニートにはなるまいと思ってたのに…)


机に置かれていた、フルートのケース(幸いにも傷一つ付かなかった)を見つめながら咲良は溜め息を漏らす。
お城の病室、しかも個室を無料で使わせてもらえるなどありがたいことこの上ないのだが、日課にしていたフルートが吹けない持てないとなると…、一日をどう過ごしたらいいのかと考え込んでしまった。

無機質など病室には何も無く、話し相手だっていないではないか。
蘭華は店のことで忙しいから、また暇を見つけて見舞いに来ると言い、先程城下に帰って行ったばかりである。


(…私、こんなことしてる暇なんか…悠生のことだって、何も分かっていないのになあ…)


未だに、悠生の居場所に繋がる情報が手に入らない。
蘭華の店には他国から流れ着いた旅人や商人も来店するが、そこはかとなく彼らに尋ねてみても、めぼしい話は聞けなかった。

もしかしたら、三國無双の世界に来たのは、自分一人だけなのではないか?
仮にそうだとしたら、これから、どうしたらいいのか。
誰のために…何のために生きれば良い?
貂蝉に呂布の形見を返したらその瞬間、咲良の生きる理由は無くなってしまうのだ。


「……あ、はい!どうぞ」


トントン、と乾いたノックの音に咲良ははっとして顔をあげる。
医者のお爺さんが苦い薬でも持ってきたのか、と身構えたが、扉を開けて姿を現したのは、咲良の予想とは真逆の美女であった。
その美しい顔を見た途端、驚いてしまい、呼吸が止まりそうになる。
咲良は彼女をよく知っていた。
あの、二喬の片割れ。
大好きな無双武将の一人、大喬だったのだ。


「だだっ…大喬、さま!?」

「そのままで。突然お訪ねして申し訳ありません」


喬玄の娘であり、孫策の妻であった。
現在は未亡人である、大喬が其処に居た。
法要の時も思ったことだが、この世界の大喬はゲームよりずっと大人びて見えた。

それもそのはずだ。
彼女の傍らには、小さな女の子がいて。



 

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